私たち美少女は!
私たちの世界とは
21世紀初期、あるアイドルグループが絶大な人気を誇った。彼女たちをモデルにしたテレビアニメシリーズが世界的ベストセラーとなり、その結果、パソコン業界から宇宙開発まで手がけてしまった。全世界の経済は秋葉原に統括され共産主義経済へと変わった。
現在、英国ロンドンを中心としたアイドルグループが全世界の支配している。
私は英国アイドルのビデオを観ている。
「ポップ音楽の本場はレベルが高いわ」
「そうね。ねえ小説『1984年』を知らない?」
「なんなの?」
「20世紀後半、ジョージ・オーウェルという人が書いた小説。現代社会を予言した人」
「で、私たちと何の関係があるの?」
私と同じ名前の佐伯美沙は、とても古い本を手にした。
「この本は、私のおじいさんが田舎の古本屋でみつけたの。いまから50年以上前だけど」
「いまどき紙メディアがあるなんて・・・。電子ペーパーで好きなだけ昔の小説は読めるでしょう」
佐伯美沙は茶色く変色した本を読み上げた。
「この小説にでてくるほど酷い社会ではないが、いずれ近い将来は、この小説と同じ社会に変わるかも知れないわ」
「ねえ、そんなの昔の人の戯言だわ」
私は政治的にノンポリである。
「でも、いまどき紙メディアが存在しているのは珍しいわ。図書館に寄付したら」
体制派支持の大沢多惠は反論した。
「私たちの未来は明るいわ。高いテクノロジーをもっているし、昔の人が書いた小説のような社会にはならないわ。ミー(佐伯美沙のこと)は、考えすぎじゃないの」
美沙は反論した。
「20世紀後半の日本も未来を楽観したわ。その結果が長期不況に陥ったじゃないの」
「その長期不況を克服したのがアキバでしょう。あたしビックブラザーを尊敬しているわ」
「ねえ、ミー、それに多惠、議論してもしかたないわ。勉強を初めましょう」
私たちは女学院の授業でならったことを復習した。
この世界では、空き缶拾いから宇宙開発まで、一つの巨大企業に独占されている。