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精霊の祝福者

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「ほぉ~?誰かと思えば魔法が使えない劣等生のウジムシじゃねぇか!!」

【主を侮辱するとは許さんっっ!!】

と指輪の赤い石の部分がなにやら不吉な色に変色し始めた。

「おちつけサラマンダー!!」
とセオが慌てて指輪に入っている火の精サラマンダーをなだめた。

「サラマンダ~?お前頭大丈夫か?サラマンダーってのはな四大精霊なんだぞ!!そうそう拝めるもんじゃね~んだよ!!妄想は頭の中でやれ!!」

(なんか勘違いされてる・・・。とりあえず人目がつかないところに移動しよう)
とセオは決心すると上級生に言った。 
   
「場所を変えて決闘をしよう!!このセオ=ドラクロアが相手になってやるっ!!」

 (俺がんばったよ~~!!)

「ふんっ!いいだろう!!叩き潰してやる!」

こうして猛獣じゃなくて上級生を連れて人が全くいない旧館の中庭に場所を移した。


「さあ始めるぞウジムシ!!叩き潰す姿が目に見えるぜ!!」と猛獣先輩(作・セオ)


「残念ながら僕の名前はセオ=ドラクロアですよ先輩」
     
少しカチーンとなって腹いせに言い返してみた。

すると猛獣先輩が詠唱した。
「空気と交わりて、破裂せよ≪暴発(エクスプロージョン)≫」


           バーン!!!!!


(髪が茶色だから土属性だと思ったのに爆発系!?)と思いつつもセオは土煙から逃げるため詠唱した。

「慈愛に満ちる大地よ、我の足を束縛せし鎖を解放せ≪飛翔(ウィング)≫!!」


「なっなんだと!?お前魔法が使えたのか!?しかも飛んでる・・・」


実は風属性を持っていても空を飛べるのは稀なのである。


(シルフともう特訓したかいがあった(感))


「まあいい。次はそうはいかないぞ。猛る焔の炎よ、集え、力の限り暴発せん≪焔爆裂(ヴァンフレア)≫!!」


「電気ショックだけにしてあげよう。雷よ、一条の光となれ、彼の者を目指せ≪雷火(ライ)≫!!」


            ズガァァァァァンンンン!!!!! 


バタンと音を立てて猛獣先輩は気絶してしまった。


(どうしたもんかな?)



【放っておくんだ(よ)】と精霊一同。



「そうだね・・・」


【全く!!ご主人様をウジムシですって!!】(byシルフ)



【主を劣等生呼ばわりとは!!懺悔しろ!!】(byサラマンダー)



【今度主を侮辱したら主ではなく我が天からいかずちを落としてくれる!!】(byサンダーバード)



このとうり怒り浸透の精霊たちの怒りを抑えるのには最低でも半日以上は必要だなとセオは確信しながら苦笑した。


しかしこの時もの陰から何者かが一部始終を見ていたことをセオと精霊達は知る由もなかった。      
    
     *            *         *
  
セオはいつもどうりにつまらないHRを過ごしていた。
あくびを噛み殺すとイヤリングにいる風の精に念話した。


〈今、突風起こしたら先生怒るかな?どうせ俺魔法使えない設定だし。〉


するとすかさず風の精ことシルフが叱咤した。


【ダメです!!いくら退屈だからってそれはいけません!!】



〈はやく≪光速天翼翔(レィウィング)≫の練習したいな~〉



光速天翼翔(レィウィング)とは風属性の上級魔法でレベルはAにあたいし、最高速度は五千キロまでが可能という夢のような魔法である。



【ご主人様は覚えが早いのでもう少しゆっくりの方がいいんですよ!!】




〈ちぇ!!サラマンダー聞こえる?〉



【我が主よどうした?】


〈俺って物覚え早いと思うか?〉


【ああ。人間とは思えん早さだ。まあ『精霊の祝福者』は特別だからな。それにこの前もBレベルの魔法が成功したではないか?】


〈豪爆炎(ヴァレーヒ)のこと?うん。〉


豪爆炎(ヴァレーヒ)とは龍の形を成す炎で焼き尽くす召喚魔術の一種だが火属性になる。
火の精サラマンダーと契約したセオがやると最低でもSレベルはあるかもしれない上級魔法である。


その時強面先生――――ライバン先生が入ってきた。


「よう!!クズども今日も無駄に元気で何よりだ。そんなクズなお前たちに新入りを紹介する。と言っても怪我して授業が受けられないためにEクラスに来た元Sクラスのヤツだ」

と強面先生が言うと廊下で立っててらしい編入生に入るように言った。

入ってきたのは背が少し高めの少年で水・氷属性を表す青髪を短く切った髪にさわやかな二枚目である。しかし右腕を三角巾でおおっていることから骨折だろう。


「初めましてアンドレアス・ファーガス・フォン=ローランドです。三か月間お願いします。」


とアンドレアスは言うと開いている席である一番後ろの席――セオの真後ろに座った。
セオは一様後ろを振り返って自己紹介してみた。


「俺はセオ=ドラクロアだ。落ちこぼれだけどよろしく。ローランド君って貴族?」


「ああ。それとローランド君はやめてほしいな。アンドリューでいいぜ。君が噂の魔法が使えない劣等生君?でもさすがドラクロア家だ。魔力が尋常じゃない。」


「ありがと。俺もセオでいいぜ。」


HRが終わると二人は雑談し始めた。アンドリューはなかなか気が合って楽しいヤツだった。
授業でも悪戯していつもより授業が千倍はましになった気がした。

放課後に二人は寮に向かって歩いていた。


「セオって将来何になりたいんだ?」


「俺の夢は誰にも負けないくらい強くなりたい。それだけだ」


「いいな~。俺は貴族の次男だから魔術師になるか分家をつくるかの二択で魔術師選んだからな」


「へ~。俺は魔術使えないから、どうなることやら」

それを聞くとアンドリューは急に真顔になり

「お前って魔法使えるだろ。」

と言った。


「えぇぇぇ~!!!!」



あまりの事にセオは驚いてしまった。

そんなこと気にせずアンドリューは興奮した声で言う。


「この前お前が先輩と決闘してるとこみたんだ!!先輩の放った≪焔爆裂(ヴァンフレア)≫のおかげで腕も爆発に巻き込まれてこのとうりだ。」


「・・・・。」



「いや。慰めてくれとは言わないがお願いが二つほどある」


「・・・・へ?」


「一つ目は俺とぜひとも親友になってくれ。二つ目は・・・・」


                 *   *  *   * 

セオはなかなか寝付けないでいた。アンドリューに言われた二つ目のお願いについてである。

『二つ目は俺とパートナーになって魔術大会に出場してほしい』だった。

魔術大会は二か月後。そのころにはアンドリューの腕の具合も大丈夫だろう。
アンドリューは元Sクラスだから実力はなかなかだろう。

「よし決めた!!魔術大会でアンドリューと組もう!!」


そして決意をあらわにしたセオだったが眠気に負けたようでそのまま寝てしまった。         

        


     
 


 


          
      
作品名:精霊の祝福者 作家名:翡翠