精霊の祝福者
「うっうっ・・・。」
広い部屋の片隅に一人の少年が床にしゃがみこんで泣いていた。
「どうして俺は魔法が使えないんだっ!!」
悲痛な声で少年が叫ぶ。彼の名はセオ=ドラクロア。世界的に有名な名門一族の直系である。
そんな彼は一族でも類稀なる魔力や反射神経、身体能力を持っているというのになぜか魔法が使えない。精霊使いという道もあるが下級精霊ですら契約できない彼には到底無理な話だ。
彼の母は現当主の後妻でセオを産むと姿を消してしまった。
前妻の忘れ形見である異母姉のベアトリスはすでに天才魔女として魔法界に君臨しておりついこの間父から跡継ぎに公式に発表されたばかりだ。
本来ならば直系であるセオが跡継ぎだが魔法が使えない以上姉であるベアトリスが継ぐのは必至だった。
そして三日前その父から魔法学校に行くように言われたのである。
一族もセオのことを『出来損ない』『不良品だ』と陰で散々言われているためセオには居場所がないのだ。
しばらくするとセオは立ち上がると
――――だれににも負けない力がほしい!!
そう人知れずセオは決意したいう。
その四日後セオは遠く離れた魔法学校に入学した。
* * * *
入学式が終わりセオは一人で廊下を歩いていた。
歩くつど『落ちこぼれだ!!魔法が使えないんだとよ』や『あの歳で魔法が使えないなんて』と言う熱烈な非難を受けたが一族に散々言われたので慣れてしまっていた。
このユスティアリー魔法学校は世界でも名門と評判が高く授業もクラスごとでレベルが違った。
S・A・B・C・D・Eの6クラス編成で魔法が使えないセオはもちろんEクラスである。しかし魔法が使えないのはセオ一人。
そんな経緯があってかセオが教室に入るとほかの生徒たちは急に口をつぐんだ。
そしてセオは居心地の悪すぎる沈黙の中、自分の席に座った。
隣には標準ぎりぎり背の高さのセオより拳一つ分高い少年が座っていた。属性を表す髪の色は赤いためきっと火の属性だろう。
ちなみにセオの髪は金髪で雷属性を表しているが雷属性は珍しいので一様はセオの自慢で来そうな分類であった。
しばらくして強面の先生が来ると授業が始まった。
1時間目の実技では散々小馬鹿にされ2時間目の魔力測定では圧倒的に学年1になったが嫌味を吐かれだんだん学校が刑務所のように感じ始めた。
そしてやっと授業が終わり生徒たちが寮に帰り始めた時セオは一人きりになれる場所を探していた。
やっと見つけたのは隠すようにあった上へと続く細い階段だった。
「搭・・・かな?」
そうつぶやきながら予想すると階段を昇り始めた。
手すりもない石段の階段は滑りやすく苦労したがなんとか最後の段を昇りきったセオがめにしたのはおよそ百年は誰も使っていなさそうな広い部屋であった。
あちこちに魔法書が積み上げられ中央には練習場のようなスペースもあった。
(なんかここ自習室みたいだ)
とセオは思いつつ部屋に足を踏み入れた。
しばらく物色しているとからんと音を立てて剣のようなものが落ちた。
剣は中剣で握りが長く全体的に金色のようで軽く錆ひとつついていなかった。
ちょっとおふざけで中剣を振り回すと突然人とは思えない低く轟くような声がした。
【私の眠りを妨げるとは何も者だ!!】
セオは声を聴くと驚きのあまり剣を取り落としてしまった。
床に転がった剣が光り輝いたと思うと目の前にセオと同い年くらいの少年が現れた。
目と髪は金色で肌もなぜか金色に発光していた。驚いて立ちすくんでしまったセオをみると少年はうれしそうに
【おお!!待っていたぞ精霊の祝福者!!我が名は雷の精サンダーバード。主よ名をなんという?】
といった。
セオは精霊の祝福者と聞いて思わず苦笑してしまった。魔法も使えず下級精霊とも契約できない自分が精霊に祝福されているわけがないのだ。そして雷の精だという少年に
「すみません。多分人違いだと思います。俺は魔法が使えないし下級精霊にも相手にされてないんですよ?」と言ってみた。
するとセオが耳を疑うような衝撃の一言を言い放った。
【魔法や精霊使いになれないのは並外れた魔力を封じ込められているからだ。封印は精霊の祝福者が力のある精霊に出会うととけるようになっている。ためしに使ってみればわかる】と
半信半疑で一様もっていそる三属性のひとつ風で実験してみた。
「大気よ、風を起こし給え<旋風(ウィンド)>」と唱えてみた。
唱え終わると急に部屋に強風が吹き荒れた。
「魔法が使えた?でも唱えたのってFレベルの最弱な魔法・・・」
【主は普通の者より強力な魔力だからな。力加減を調節せねば。でもBレベルの魔術を使ったりすれば搭ごと崩れていたな。とりあえず我は証明したのだから契約を!!早くせねばシルフが契約しに来るからな】
と一番に契約したがりの雷の精とセオは契約を交わした。
その三日後には風の精シルフや火の精サラマンダーが契約しに来たりしてセオは驚いていた。
なんと言っても四大精霊の三体と契約したからである。
そしていつの間にかセオはこの秘密部屋で契約した精霊と魔術の修業を始めた。
* * * * *
雷の精や風の精、火の精と修行すること一カ月を過ぎようとしていた。
「ねぇ、サンダーバード」
セオは廊下を歩きながら≪バスタード・ソード≫と呼ばれる中剣になっている雷の精霊に話しかけた。
(といっても念話だが)
【なんだ主よ】
「どうしてサラマンダーやシルフと仲悪いの?」
【ほかの属性の精霊と仲いい精霊など聞いたことがないぞ】
「たったしかに」
セオは自分で聞いておきながらしどろもどろになってしまった。
しかし実際、搭の上での修行では三体同時に出すとすぐケンカしてしまうため一体ずつ出現させないといけないのだ。
――――少しくらい仲良くしてもらった方が修行もはかどるのに・・・。
そんなこと考えていると突然争うような声が聞こえた。
「おい、こらてめぇ!!この練習場はAクラスが使うつってんだろ!!さっさとどけよ!!」
「いっいやです・・・」
どうやら喧嘩しているのはAクラスの最上級生の男子生徒とDクラスのセオと同じ一年生の男子らしい。
(よく喧嘩するきになったね・・・)
セオは呆れ果てたに近い尊敬を感じた。それもそのはずDクラスの少年はかわいそうなくらいがりがりでそばかすまみれに丸眼鏡。それに対して最上級生は筋肉モリモリに恐ろしげな傷がある強面。
どう見てもDクラスの少年には分が悪すぎる。
(う~ん、どうしようかな?ほっとくのはも良いけど助けないといけないパターンだろうな・・・)
【力試しにやってみるべきよ!!】
と言う風の精シルフの熱意のこもった言葉におされ助けることにした。
「先輩~。下級生をいじめるのはいけないと思いますよ~」
とセオは生きていた十三年間の中で一番勇気のある言葉を言った。
(ひぇ~!!睨んでる~!!!死刑確定かも。。。)
広い部屋の片隅に一人の少年が床にしゃがみこんで泣いていた。
「どうして俺は魔法が使えないんだっ!!」
悲痛な声で少年が叫ぶ。彼の名はセオ=ドラクロア。世界的に有名な名門一族の直系である。
そんな彼は一族でも類稀なる魔力や反射神経、身体能力を持っているというのになぜか魔法が使えない。精霊使いという道もあるが下級精霊ですら契約できない彼には到底無理な話だ。
彼の母は現当主の後妻でセオを産むと姿を消してしまった。
前妻の忘れ形見である異母姉のベアトリスはすでに天才魔女として魔法界に君臨しておりついこの間父から跡継ぎに公式に発表されたばかりだ。
本来ならば直系であるセオが跡継ぎだが魔法が使えない以上姉であるベアトリスが継ぐのは必至だった。
そして三日前その父から魔法学校に行くように言われたのである。
一族もセオのことを『出来損ない』『不良品だ』と陰で散々言われているためセオには居場所がないのだ。
しばらくするとセオは立ち上がると
――――だれににも負けない力がほしい!!
そう人知れずセオは決意したいう。
その四日後セオは遠く離れた魔法学校に入学した。
* * * *
入学式が終わりセオは一人で廊下を歩いていた。
歩くつど『落ちこぼれだ!!魔法が使えないんだとよ』や『あの歳で魔法が使えないなんて』と言う熱烈な非難を受けたが一族に散々言われたので慣れてしまっていた。
このユスティアリー魔法学校は世界でも名門と評判が高く授業もクラスごとでレベルが違った。
S・A・B・C・D・Eの6クラス編成で魔法が使えないセオはもちろんEクラスである。しかし魔法が使えないのはセオ一人。
そんな経緯があってかセオが教室に入るとほかの生徒たちは急に口をつぐんだ。
そしてセオは居心地の悪すぎる沈黙の中、自分の席に座った。
隣には標準ぎりぎり背の高さのセオより拳一つ分高い少年が座っていた。属性を表す髪の色は赤いためきっと火の属性だろう。
ちなみにセオの髪は金髪で雷属性を表しているが雷属性は珍しいので一様はセオの自慢で来そうな分類であった。
しばらくして強面の先生が来ると授業が始まった。
1時間目の実技では散々小馬鹿にされ2時間目の魔力測定では圧倒的に学年1になったが嫌味を吐かれだんだん学校が刑務所のように感じ始めた。
そしてやっと授業が終わり生徒たちが寮に帰り始めた時セオは一人きりになれる場所を探していた。
やっと見つけたのは隠すようにあった上へと続く細い階段だった。
「搭・・・かな?」
そうつぶやきながら予想すると階段を昇り始めた。
手すりもない石段の階段は滑りやすく苦労したがなんとか最後の段を昇りきったセオがめにしたのはおよそ百年は誰も使っていなさそうな広い部屋であった。
あちこちに魔法書が積み上げられ中央には練習場のようなスペースもあった。
(なんかここ自習室みたいだ)
とセオは思いつつ部屋に足を踏み入れた。
しばらく物色しているとからんと音を立てて剣のようなものが落ちた。
剣は中剣で握りが長く全体的に金色のようで軽く錆ひとつついていなかった。
ちょっとおふざけで中剣を振り回すと突然人とは思えない低く轟くような声がした。
【私の眠りを妨げるとは何も者だ!!】
セオは声を聴くと驚きのあまり剣を取り落としてしまった。
床に転がった剣が光り輝いたと思うと目の前にセオと同い年くらいの少年が現れた。
目と髪は金色で肌もなぜか金色に発光していた。驚いて立ちすくんでしまったセオをみると少年はうれしそうに
【おお!!待っていたぞ精霊の祝福者!!我が名は雷の精サンダーバード。主よ名をなんという?】
といった。
セオは精霊の祝福者と聞いて思わず苦笑してしまった。魔法も使えず下級精霊とも契約できない自分が精霊に祝福されているわけがないのだ。そして雷の精だという少年に
「すみません。多分人違いだと思います。俺は魔法が使えないし下級精霊にも相手にされてないんですよ?」と言ってみた。
するとセオが耳を疑うような衝撃の一言を言い放った。
【魔法や精霊使いになれないのは並外れた魔力を封じ込められているからだ。封印は精霊の祝福者が力のある精霊に出会うととけるようになっている。ためしに使ってみればわかる】と
半信半疑で一様もっていそる三属性のひとつ風で実験してみた。
「大気よ、風を起こし給え<旋風(ウィンド)>」と唱えてみた。
唱え終わると急に部屋に強風が吹き荒れた。
「魔法が使えた?でも唱えたのってFレベルの最弱な魔法・・・」
【主は普通の者より強力な魔力だからな。力加減を調節せねば。でもBレベルの魔術を使ったりすれば搭ごと崩れていたな。とりあえず我は証明したのだから契約を!!早くせねばシルフが契約しに来るからな】
と一番に契約したがりの雷の精とセオは契約を交わした。
その三日後には風の精シルフや火の精サラマンダーが契約しに来たりしてセオは驚いていた。
なんと言っても四大精霊の三体と契約したからである。
そしていつの間にかセオはこの秘密部屋で契約した精霊と魔術の修業を始めた。
* * * * *
雷の精や風の精、火の精と修行すること一カ月を過ぎようとしていた。
「ねぇ、サンダーバード」
セオは廊下を歩きながら≪バスタード・ソード≫と呼ばれる中剣になっている雷の精霊に話しかけた。
(といっても念話だが)
【なんだ主よ】
「どうしてサラマンダーやシルフと仲悪いの?」
【ほかの属性の精霊と仲いい精霊など聞いたことがないぞ】
「たったしかに」
セオは自分で聞いておきながらしどろもどろになってしまった。
しかし実際、搭の上での修行では三体同時に出すとすぐケンカしてしまうため一体ずつ出現させないといけないのだ。
――――少しくらい仲良くしてもらった方が修行もはかどるのに・・・。
そんなこと考えていると突然争うような声が聞こえた。
「おい、こらてめぇ!!この練習場はAクラスが使うつってんだろ!!さっさとどけよ!!」
「いっいやです・・・」
どうやら喧嘩しているのはAクラスの最上級生の男子生徒とDクラスのセオと同じ一年生の男子らしい。
(よく喧嘩するきになったね・・・)
セオは呆れ果てたに近い尊敬を感じた。それもそのはずDクラスの少年はかわいそうなくらいがりがりでそばかすまみれに丸眼鏡。それに対して最上級生は筋肉モリモリに恐ろしげな傷がある強面。
どう見てもDクラスの少年には分が悪すぎる。
(う~ん、どうしようかな?ほっとくのはも良いけど助けないといけないパターンだろうな・・・)
【力試しにやってみるべきよ!!】
と言う風の精シルフの熱意のこもった言葉におされ助けることにした。
「先輩~。下級生をいじめるのはいけないと思いますよ~」
とセオは生きていた十三年間の中で一番勇気のある言葉を言った。
(ひぇ~!!睨んでる~!!!死刑確定かも。。。)