その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「色々って、どこが違うんだ?」
すると、待ってましたとばかりににやぁ〜っと笑われた。不気味だからその笑い方は直した方がいいと思う。余計なお世話は承知だけど。
打海は指を立てながら一つずつ挙げて行く。
「沢山ありますよ?空から降ってくるとか、戦争に反対してるとか、亀まがいとグリフォンを従えちゃうとか、戦闘の中にわざわざ突っ込んでいくところや、見返りなしで動こうとするところとか」
見返りなしで動けた記憶はないけどな。必ず何らかの契約の形にさせられた記憶がある。
「なにより男だってのが一番の驚きですよね」
・・・はい?
「ちょ、今何て言った?」
「『一番の驚きですよね』?」
「わざとだろ」
「失礼。『男が初』ってことですよね?」
反省した色のない「失礼」は、それこそ失礼な話だと彼は気付いていないのだろうか?いや、そこもわざとなんだろうけどさ。
それにしても男が初ってどういうことだ?今までのアリスは全員女性だったってことか?ってか、そうだよな・・・
思ったよりもずっと、俺はイレギュラーな存在だったらしい。この先どうなるのか解らないのは、俺だけじゃないみたいだ。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷