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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「お互い、助け合わないか?」
 助け合いと聞けば聞こえはいいが、きっと彼が言いたいのは交換条件ということだ。俺を助ける代わりに、自分も助けろということ。これに二つ返事で答える馬鹿はいない。条件を聞こうとすると、彼は首輪に繋がる重たそうな鎖をじゃらりと持ち上げた。
「オレはある理由から捕えられているんだ」
「ある理由って?」伏せるところが怪しいと、俺は警戒心を高める。今まで温厚に話していたが、もし罪を犯して繋がれているのであれば、脱獄の手助けになりかねない。そういう人は脱獄のためなら、どんな皮だってかぶれるに違いないというのが俺の考えだ。彼はその警戒心を喜ぶように俺を見た。
「友達だよ」
「犯罪がらみか?」
「ははっ、この世界じゃ赤の女王に気に入られないやつはみんな犯罪者だからなぁ。そりゃそうなるのかもしれないけど」
 かなり独裁の強い世界のようだ。つまり、その気に入らないやつを捕まえるための囮と言うことなのだろうか?そうたずねてみると、彼は首を横に振った。
「いや、オレしかそいつがどこにいるのかを知らないんだ。そいつは頭が良くてな、ぜひとも配下にしたいらしい」
 三国時代の諸葛孔明っていうところか?俺はその人物をもやもやと想像する。それから彼を見た。どうやら彼は、友達を守りたいようだ。彼の話はまだ続く。
「そこでだ。お前をそいつのところへ案内してやる。あいつなら、きっとそのくらい『記憶』しているはずだし。だからオレを助けてくれ」
「お前が逃げない保証がないだろ」
 当然の疑いだと思った。でも、彼にとっては不思議なことだったらしい。
「オレに従属してないだろ?変な奴だな」
 どうやらこの世界では、一方的な提供か交換の二択らしい。裏切るという考えは毛頭ないようだ。こいつがしらばっくれてるのかもしれないけど。
 条件を呑む前に、もう一度念入りに確認した。
「お前の友達は、本当に知ってるんだな?」
「ああ、保証できる」
 先ほどまでの笑みが嘘のように、真面目な顔だった。俺は大きく息を吐いて、頭をかく。それから立ち上がって、大きく伸びをした。それから「よし」と声を出す。肩に手を当てて腕を振った。ゴキゴキ鳴っている気もするが、先ほどの怪我は大して酷くないようだ。腰に手を当てて後ろに反りかえってから、視線を彼に向けると、彼は驚いた顔をしていた。