安全な戦争
「どうしてだろう」
俺はそう問わずにはいられなかった。
柏木や沢村を殺し、俺を保護してくれた村人を虐殺した。俺には帰れる資格があるのだろうか。そして同時に、どうして仲間を見送ることなんてできるだろうか。
壁でうなだれたまま、俺はぼそぼそと呟いた。
「帰ってくれないか」
綾乃にそう告げると、彼女は黙って部屋を出た。
沈黙が訪れたのを確かめてから、俺は大声で叫んだ。
「くそったれだと!? 糞をする前と後にサーと言ってみろ!!」
かつて、入隊したばかりのころの教官の言葉をそっくりそのまま使って、俺は叫んだ。本当にとんだくそ野郎だ。自分に誓ったものを守れないなんて。