【無幻真天楼 第十二回】ココロのうた
緊那羅の背に見える羽根が大きく開き羽ばたくと緊那羅の体を空へと運ぶ
その緊那羅の体を追うように清浄から放たれた十二の光りが緊那羅目掛けてぶつかっていく
「柴田! やめろよ!! 緊那羅にあた…」
「メガネ!!」
駆け出そうとした坂田の腕を阿修羅がつかんだ
「はなせよ!! はなせってんだろッ!!」
「お前さんがいってどうなるっちゅうんだ!! ただ怪我するだけやんきに!!」
「怪我するんだろ!? あの技って…だったら柴田だって怪我するじゃんか!!! 緊那羅だってそうじゃんかよッ!!!」
坂田が怒鳴り散らす
「メガネそ…」
「柴田はッ!! 俺の家族なんだッ!!! 緊那羅は俺の友達で!! 友達や家族を守りたいと思って何が悪い!!!」
右の鼻の穴から少し鼻水を覗かせながら怒鳴った坂田に清浄が目を向けた
くいくいと服を引張られて京助が少し視線を下に向ける
「京助は?」
表情変わらないお面の鳥倶婆迦が見上げ聞く
「京助は守りたくないの? 緊那羅を」
「へ…?」
聞かれた京助が疑問形の返事を返した
「おいちゃんたぶんだけど緊那羅…混乱してるんだと思ういっぱいいっぱいなんだと思う…自分が誰なのかわからないんだと思う」
京助の服を握る鳥倶婆迦の手に力が入った
「操って人と緊那羅とが一緒になっちゃって緊那羅が困ってる気がするんだ…京助…京助が操って人をどう思っていたのかおいちゃん…わからないけど…けど…京助は緊那羅が好きでしょ?」
鳥倶婆迦の言葉に京助が自分の手をぎゅっと握り締めた
「…俺は…」
作品名:【無幻真天楼 第十二回】ココロのうた 作家名:島原あゆむ