「セックスアンドザシックスティーズ」 序章
無事銀婚式を過ぎて子育てから開放された50代の主婦達が楽しみを求めて趣味のサークルに入ったり、気の合う友達同士でランチしたり、日帰りバスツアーに出掛けたりするようになる。夫と仲良く出かけたいと考えている主婦達はこの物語には登場しない。
若い頃にすれ違いや相手の浮気から離婚をした女性も苦労して子育てを終えて、これから自由に羽ばたきたいと女磨きを始める。
縁が無く結婚しなかった女性もずっと一人で暮らすことに不安を感じながらチャンスがあれば結婚したいと最後の希望を捨てないでいる。
いまやインターネットは高齢者やちびっ子までに普及している。シルバー世代に向けたSNSも登場して多くの会員を募っている。
「60歳をみんなで祝いましょう」とタイトルされたコミュニティーをあるサイトで見つけた女性達がいた。
入会の挨拶だけしか交わしていなかったが一人の書き込みがきっかけになって4人は知り合うようになった。その書き込みとは、
「女を諦めてはいけないと思うの」とタイトルされたトピックであった。そして最後に結んであった一句が引き金になってマイフレンドへと進み、60歳を迎える年の春に花見を兼ねて逢いましょう、と言う約束にまで発展した。
「残された時間は短いけど、燃え尽きたいと思っています」そう書かれた文章は4人が仲良くなるほどにそれぞれの心に突き刺さっていたのだった。
約束の時が来た。2012年4月1日日曜日厳しい冬の寒さから桜の開花が遅れていたが、ほぼ本州全域で桜が開花していた。大阪、名古屋、浜松、東京とそれぞれの住んでいる場所が異なるために真ん中に当たる名古屋で4人は顔を合わせることにした。JR高島屋がある駅ビルの吹き抜けになっている中央口エスカレーター前の時計台の下で約束の12時を知らせるメロディー音が聞こえてきた。
作品名:「セックスアンドザシックスティーズ」 序章 作家名:てっしゅう