小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

彼と彼女の連作

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 

境界線を探す彼






  音と言葉の境目はどこにあるんだろう。 
  海と陸の揺らがない境目ってあるんだろうか?


 彼はいつも、自分の中に境界線を探している。
 先生は彼が嫌いだ。
 彼はいつも笑って理屈ばかりこねていて、ごめんなさいを言わない。
 彼があまりに屁理屈をいうものだから、ふと聞いてみたくなった。
 ずれたメガネを直すと、あのほほ笑みがいつもよりきれいにみえる。



「僕の言う境界はどこにあるのかって?簡単だよ」

 そう言って、彼は黒板から白いチョークを手にとり、窓の外の大空にまっすぐな線を引いて見せた。

 いつものように、その顔には笑みが浮かんでいるだろう。
 その背中を見つめて、私は何も言わなかった。

「嘘だよ。」

 笑っていたはずの顔はゆがんでいて、長かったチョークはその手の中で折られていた。
 彼はゆっくり私を抱きしめて、ひとつ大きく息を吸い込んだ。

 
 怖い、怖くてたまらない。
 境界が見えない。
 僕は知らないうちに、大人と子供の境界を飛び越える。
 広い世界から、狭い処へと押し込められる。
 いつまで、僕はいつまで、許される世界にいることができるのだろうか。



 彼のほうが背が高い。
 そのせいで包み込むように抱かれている私は、今度も何も言わなかった。
 小さな子にするように背中に手を回す。
 肩が濡れる感触に、好きだなぁ。と思った。




作品名:彼と彼女の連作 作家名:catakom