スリリングな夢
9
流れ出る血液。
普通ならショック症状で気を失っても良さそうなのだが、ソレも無い。
俺は大量の出血の中、全身を襲う痛みの中で目の前が真っ暗になって行った。
それから俺は辿ってきた冒険の数だけ、あらゆる方法で死んでいった。死のパニックは経験を積む度に薄れて行き、冷静な恐怖と痛みは死ぬ直前まで鮮明に感じる様になって来た。
そして全ての冒険が終わり、安らかに死ねると思ったとき――。
猛スピードの黒い高級車が正面からぶつかってきた。
腰骨が砕け、内臓が破裂する感覚。
洋服のどこかが引っ掛かったのか、そのまま引き摺られてしまった。
皮膚はおろか、肉までもが擦り切れ、骨がガリガリと削れて行く。
ヤケに鮮明な痛みを他人事の様に感じながら、オレは奇跡的に放さずにいたボールペンを……。
おわり
03.04.30 №32