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アイラブ桐生 第三部 第三章 39~40

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 「要するに、頼まれた荷物を時間までに目的地に着ければ、
 それでいいだけの話だ。
 その間を、どんな風に走ろうが休もうが、まったくもって俺の自由さ。
 監視をされていないという気楽さが、まずもって、一番だろう。
 運転手ってのはそういう人種だ。
 監視されることがもっとも苦手な、わがままな人種たちだ。」

 心の自由がなによりだ。
そう言いのけてから橋本さんは、細い目をより細くして笑います・・・・


 「だからもう、もとには戻れないのさ。
 監視されて仕事をしたり、朝から晩まで人の目を気にして
 生きることができないんだ。
 運転手っていう人種は・・・・
 まぁ、陽の当らない、渡世人の仕事だな」

 軽い仮眠だけで、酒気帯びのまま名神高速に乗るためにひたすら飛んできた、
その本当の理由が、やがて判明しました。
神戸の手前でトラックを停めた橋本さんが、洒落たシャツに着替え始めました。
すでに先着をしていた岡部くんも、小さっぱりとした服装で
タクシーの脇で待っています。

 
 白髪交じりの角刈りに、たっぷりとポマードをくれてから、
ルームミラーでそれを確認したあと、満足そうに橋本さんが口笛を吹きました。


 「よう相棒。今夜はココで一泊だ。
 そこにある食堂なら、深夜の2時までやっている。
 俺と岡部は訳ありで、たぶん、朝帰りになるから
 自由気ままにやってくれ。
 じゃァな、相棒!」


 そういうと、勢いよくトラックから飛び降ります。
岡部くんが待ちわびているタクシーに向かって、歩きはじめた時・・・・
「肝心な事を、言い忘れていた」と、戻ってきました。


 「あぁそうだ。
 もしかしたらだが、夜中に性悪女が来るかもしれねえ。
 そいつが来ても絶対に、間違っても相手なんかするんじゃねえぞ。
 そいつは疫病神だからな。
 橋本さんはいますかと聞かれても、、
 俺には関係ないかっと言って、つっぱねろ。
 相手にすることはねえぞ。
 ちょっと見には、いい女だが
 見た目に騙されると酷い目にあうからな。
 用心しろよ。
 まぁ・・・・寝首を掻かれないないように、充分に気をつけろ!」


 じゃあ行ってくるぜ、と、元気に駆けだして行きます。
何の話か、私にはよく分かりません・・・・
遊びに行くために今夜は戻ってこない、それだけは了解できましたが、
なぜ性悪女が登場してくるのか、その意味が全くわかりません。


 トラックが停められたこの場所は、歓楽街のほど近くです。
国道沿いに建っているこのドライブインの駐車場は、敷地も広く、
沢山のトラックが整然と横一列に並んで休憩をしています。
深夜になっても駐車場の照明はまったく消されず、煌々とした明るさが残っています。
そうした明るさのせいか、ほとんどのトラックがカーテンをしっかりと閉めきって
それぞれに寝付いているようです。


 しかし事件は、その真夜中に起きました。


 10時過ぎに食事を済ませ、ワンカップを3本ほど買い込んでトラックへ戻り、
その2本目が空になったときのことです。
遠くからコツコツという足音が響いてきました。
この夜中に? それもずいぶんと軽い感じの足音が聞こえてきました。
ハイヒールみたいな靴音だ・・・・?


 何だろうこの夜更けにと思いつつ、3本目を開けた時でした。



 足音がすぐ近くで立ち止まります。
コン・コン・・・・コン。
やがて、トラックの運転席側の窓ガラスが軽くノックされました。
カーテンの隙間から覗きこんでみると、薄明かりの中に妙齢の美人が一人立っています。
これが、橋本さんの言っていた疫病神の性悪女でしょうか・・・・
本当に現れてしまいました。