アイラブ桐生 第三部 第三章 39~40
「荷物を預かれば、何が有っても時間までには届ける。
それが俺たち運転手の仕事だ、
遅れれば、工場のラインが停まることもある。
一人や二人じゃないないぞ。
ラインが止まれば全員が困ることになる。
なにがあっても時間をまもって荷物を届ける。
それが俺たちの責任だ。
紙ッペら一枚の問題じゃないのさ、裏側には実は、
そんな事実もひそんでる時が有る。
だから、俺たちはいつでって、寝ずにでも結果のために走るのさ・・・・」
とりあえず、工場へ荷物をおろしてくるからと、
少し手前のドライブインで降ろされました
24時間営業のドライブインと書いてありますが、見た目はどう見てもただの大衆食堂です。
建物の裏側には、温泉と仮眠施設の看板が見えました
広い駐車場のほぼ半分に、横一列に大型トラックが並んでいます。
立てつけの悪いガラス戸を無理やり開けて、中に入ると
田舎の大衆食堂そのものの内部の様子に、またまた・・・びっくりしました。
傷だらけのテーブルには薄汚れたビニールカバーが掛けられていて、
折りたたみのスチールイスが、無造作に実にだらしなく、散乱をしています。
小上がりに置いてあるのは、家庭用と思える質素な座卓です。
それもずいぶんと年代物だ・・などと感心をして眺めていたら、
60年代のおばさんが突然、目の前に現れました。
「今のトラックは、橋本さんだろう。
で、それから降りてきたあんたは一体どこの何者だい 」
いきなり声をかけられましたが、それはこっちが聞きたいくらいです。
事情を説明しょうとしたら、背後から声がかかってきました。
「あっ婆さん。そいつは連れで、俺らと同じ群馬のもんだ。
ひょんなことで、昨日、鹿児島でひろってきたばかりの知り合いだ。
よう、遠慮するなよ、こっちへあがれ」
小上がりから呼んでいるのは、昨日酔いつぶれていた岡部くんでした。
一番奥の壁にもたれて、もう朝からビールを飲んでいます。
しかも、もう、こいつは完全に酔っ払っています・・・・
「橋本の兄貴は、寝ずにここまで飛んできたみたいだな。
ご苦労さんなこった。
はるばるの長旅、お疲れさん。
まあまあ、とりあえず、一杯いこう。
お~い、婆ぁ、ビールくれぃ」
グラスを差し出すと、
岡部君が勢いよくグラスの目いっぱいにまでビールを注ぎます。
一気にあふれてくる泡へ、あわてて口を近づけると、
こぼれる前に、一息に呑んでしまいました。
「おっ、さすがの早技。
やっぱり呑ん兵衛は違うねぇ。
口から行くところなんか、なかなか見上げた呑み師だねぇ~
呑みねぇ、呑みねぇ、遠慮すんなって。」
すっかりと、宴会モードが始まりました。
作品名:アイラブ桐生 第三部 第三章 39~40 作家名:落合順平