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厄宮 殺那
厄宮 殺那
novelistID. 36716
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無能の中にも、一人くらい有能がいるはずだ

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確認しているのだ。
「おそらく、そうだと思います」
「宮刑」
少し、駄洒落で言ってみた。
「あいつには、もう不必要な器官だから、いいよね」
宮刑とは、古代中国にある死刑の次に重い刑で、男なら生殖機能を奪う刑らしい。
厄宮の宮はその宮、だ。
校長室へ直行。

「おぉ、陽雅、今は誰もいないからオッケーだぞ」
「今は、そんなのどうでもいい」
「開口一番に怖いなぁ。じゃあ、何で来たのさ? あまり関わりたくないとか言っていたじゃないか」
何をとぼけていやがる。
「校長先生に折り入って、お願いしたいことがありまして」
「学校のことなら、一万。クラスのことなら、五万。寮のことなら、三十万だ」
絶対、解かっているな・・・こいつ。
「総一郎の命は、何円に値する?」
「五百円」
「なら、総一郎の命と、二十九万九千五百円でお願いしたいことがあるのですが」
いちいち動じないように心がける。
「俺の命取れるのか?」
「取るさ、特に総一郎の生殖器を」
「何を言っているのだ?」
答える必要は無い。
二人が黙り込み沈黙が訪れる。
臨戦態勢と言うのだろうか。
最初にその沈黙を破ったのは総一郎だった。
「悪かったとは思っているよ。あれだろ、陽雅の可愛い子ちゃんと部屋同じにしたことだろ? まあ、でも今までも一緒に居たのだから、問題ないかな、ってね」
いきなり弁明かよ。
それに、
「普通に考えて、問題ない訳ないだろ」
「無いことを無いで否定するのって、意外とおかしいとは思わないか? 陽雅」
「話を逸らすな」
「ごめんちゃい」
自分の怒りが、こみ上げてくるのを感じる。
大きく深呼吸。
またも静寂。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
そうして、またも静寂を破ったのは、総一郎だった。
「だって、部屋が空いていないのだよ、うん。解かってくれ、陽雅」
「だからって、俺は男で、あれは女だぞ」
「だから、その理由はさっき言わなかった?」
「理由になってない」
そういった瞬間。
総一郎の後ろに小さな人影。
一瞬の間に総一郎は、両手は封じられて、喉下にナイフを突きつけられている。
「あぁ、陽雅の可愛い子ちゃんは、過激だねぇ」
やや裏返っている声で、挑発するように言う。
声が裏返っちゃ、命乞いをしているようにしか見えないが。
「やっちん、殺しちゃあ駄目だろう」
「陽雅から、怒りが伝わって来ましたし、先ほど宮刑にする、と申していたので、じゃあもうこのクズ一郎様は殺してもいいかな、と思いまして」
「あぁ、だから生殖器なのか、陽雅はゲイなのかと心配したじゃないか」
あからさまに話を逸らそうとしているのが、解かる。
てか、そんなどうでもいい知識まで知っているのか。
「どうでもいい、てか、総一郎の心配なんか、いらない」
「あれだろ? 古代中国の刑罰で、男子は生殖器を去り、女子は幽閉もしくは筋を剥いだという、五刑の一つで・・・・・・」
俺の言葉は無視で、饒舌に語り始める。
「別名、宮、腐刑、宮割、淫系、とも言うな。で、この淫と言うのは、男女のみだらな関係を表す語で、淫と殷が掛かっ・・・・・・」
淫と殷が掛かっているって、言葉じゃ解かる訳ないし。
解かってしまう俺も、大概おかしいかも知れないのだが。
・・・自分の血管が浮き出ているのを確認する。
「本気で、死にたいの・・・・・・?」
「だから、冗談だっ」
ドアを叩く音がした。
と、同時に、二人の話し合いは緊急閉鎖。
やっちんは、そこにいなかったかのように風とともに消えた。
足音を出さないようにクローゼットの中に潜り込む。
「失礼します」
女性の声がして、ドアの開く音が部屋に響き渡る。
「やあ、琴美じゃあないか」
琴美っ!?
口には出さずに心の中で叫ぶ。
「やあ、琴美、じゃなわよ」
「学校はしっかりやっているのか?」
一端のお父さんらしい言葉が、総一郎の口から発せられる。
「違う違う違う。そうじゃなくて、校長先生に折り入って、お尋ねしたいことがありまして」
聞いているだけだが、怒りがこめられているようにも聞こえる。
「寮のことなら一万円、学校のことなら五万円、クラスのことなら三十万だ」
娘からも、金巻き上げるのか!!
またも、心の叫び。
「はい、三十万」
「わお」
提案者の総一郎自身が驚いているようだ。
「今日、クラスに宮本ヨウガ、って言う男子生徒が転入して来たわ。話によると校長の推薦らしいじゃない」