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いちごのショートケーキ 7

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 いつの間にか座り込んで聴いていた鈴木さんがいて、目が合うと微笑んで拍手をしてくれた。
 「こんな景色見ながらだと、なんだか寂しくなるなぁ」と笑って見せると鈴木さんは大人びた顔をして窓の外を見つめながらポツリと「私は冬路がいなくなったから寂しくなった」と言った。核心を突かれて驚くと鈴木さんは照れ笑いしながらもまっすぐに私を見た。


 「私冬路のこと好きだったんだ。さっきキレイサッパリ振られてきた!冬路はさ、森下さんを好きだったんでしょ?」

 思わず息を飲むと鈴木さんは慌てて胸の前で片手をぶんぶん振る仕種で否定を現した。

 「変な意味じゃないよ。冬路見てたら分かっちゃって」
 「…そんなに、分かるの?」
 「普通は分からないと思うな。冬路隠すタイプだから…でも、好きな人だと分かっちゃうんだよね。(あぁまた森下さん見てるなぁ)とか」

 そうして微笑む鈴木さんは女性の顔をしていてどこか大人に感じた。


 「私…私も高村君をすごく、すごく好きだったの。でもそれは高村君のくれる好きじゃなくて…」

 言いながらそれでも高村君を好きだと思う自分がひどく勝手に思えて、目の奥が熱くなった。

 「尊敬してたの。憧れてたの。『フルートが吹いてみたい』なんて、単純な理由でど素人で入部して大変だったのにすぐコツ掴んじゃってどんどん上手くなるし、なのに少しも鼻にかけない所も、友達と輪の中にいても躊躇いなく抜けてきて、一人だった私のそばにいてくれたこととかすごく嬉しくてこんなすごい人になりたいこんな優しい人になれたらって…」


 話してる間に我慢出来なくなって涙が頬に向かってラインを描く。暗くオレンジ色になりつつある空が眩しかった。


 「冬路は器用貧乏なの。あいつたいていのことはそれなりに上手くこなせるの。だから極められないの。二年も同じクラスだったから知ってんだ」


 私を見た鈴木さんがわざとらしく得意気な笑顔をつくって見せる。


 「その冬路が、森下さんにはちゃんと向かっていったんだ。それで良くない?森下さんもちゃんと向き合ったんなら良いよ」


 「なんてふられた私が言うのもなぁ」と額にシワを寄せてぶつぶつ文句をいう顔がなんだかおかしくて、声をあげて笑うと鈴木さんに睨まれた。それがまたおかしくて今度は二人で笑ってしまった。