スケートリンク
目が覚めると既に飛行機は着陸していた。間もなく空港から彼はバスに乗った。山村ワインが倒産したという中年女性たちの話が、バスに乗ると間もなく聞こえた。その直後、池上はもう一度絵里香が池に沈んで行く様子を想い浮かべた。夢は現実に起きたことだった。あの日、絵里香をスケートに誘ったのは池上だったのだ。そして、この前の女性の乗客は、池上慎太郎を今も恨み続けている山村絵里香の霊だということになる。それを心の中で確認した彼は、家に行くことを躊躇った。彼は駅前の居酒屋で酒を飲み始めた。時刻は午後六時になろうとしている。
「池上!こんなところで何してるんだ。もうすぐ通夜の時間だろうが」
すぐには思い出せなかったが、彼に声をかけた髭面の男は、中学のときの同級生のひとりだった。今はトラックドライバーをしている筈だと思った。
「……通夜だって?うちの誰かが死んだのか?」
「知らねえのかよ!お前の兄貴が今朝事故ってよう、その車におふくろさんも乗ってたんだ。だからシンちゃんはこっちに帰って来たんじゃないのか?」