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スケートリンク

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「秘密池」
「……忘れていました。そう云えば、そういう池がありましたね。ということは……」
 電話が切れた。池上は息苦しさを覚えながらも着信履歴から電話帳登録しようとしたが、それはできなかった。非通知だったことを思い出して彼は落胆した。番号案内を思いつき、山村ワインの番号を教えてもらってそこに電話したが、相手が出なかった。留守番電話にもなっていなかった。
コンビニでビールを買って帰ると、池上はそれを飲みながら考えた。秘密池についてである。その池の大きさや形は微かに記憶がある。恐らく直径が二十メートルくらいの小さな池だった筈だ。春には桜の花びらが池の表面を覆った。夏にはそこで魚を釣ったような気がする。少し離れて大きな川が流れ、その川と池は地下で繋がっているという噂があった。事実、そこでは四十センチのアメマスが連れたことがあった。池上を含む子供たちは、そこで泳いだこともあった筈だ。潜ってみると、想像以上に深い池だった。そして、冬になるとそこは天然のスケートリンクになった。

                  *



作品名:スケートリンク 作家名:マナーモード