もう一度、結び直したい、夫婦の絆を
そして、一夜が明けた。この小さな温泉宿が朝から騒々しい。
パトカーが来ている。
「女将さん、今朝、そこの海岸であがった仏さんたち、ここの宿泊客だろ。御夫婦だったようですな。何か手掛かりになるようなものを残してませんか?」
刑事はこういう事件に手慣れているのか、真っ直ぐに訊いてきた。
女将の方は、もうこれ以上の厄介は御免だ。
「刑事さん、部屋に子供さん宛に書かれた遺書がありました。ご遺族に渡して頂いて、さっさとケリつけて下さい」
そして、刑事の手に渡された便箋一枚、そこにはこう書かれてあったのだ。
子供たちへ
すまない。
夫婦の絆。
それは結ばれているようで、ずっと解けていたり、いつの間にか結び目がなくなっていたりもするものだ。
あちらへ行って、道に迷ってる妻と、
もう一度、結び直したい、夫婦の絆を。
妻が愛おしく、
そして、あまりにも・・・不憫過ぎて・・・
これは夫婦の問題だ。
だから、お前たちの母を連れて逝くことを・・・許してくれ。
父 凛太郎より
おわり
作品名:もう一度、結び直したい、夫婦の絆を 作家名:鮎風 遊