ゆきだるまさんのおはなし
あいちゃんは、数日間は、僕がいた場所――まだ体の残骸がわずかに残っていた――を、気にして眺めていた。
でも、1週間もすると、そこを振り返ることもなく、けんたくんと一緒に元気に遊びに行くようになった。
それで、いいんだ。あいちゃんは僕を忘れる。それでいいんだ。
寂しくないよ。
またいつか僕は戻ってくるから。雪だるまだった僕は、とけて地に流れ、川となって海に出て、空に昇って、またいつか雪になる。そして雪だるまになって、君のような子と出会うんだ。
完全に僕の体が消えてしまうと、あいちゃんのお母さんが、その痕を片づけてくれた。小さなバケツと、木炭の欠片を拾い上げ、そして呟く。
「ありがとうね、雪だるまさん」
僕は応える。どういたしまして。
ほら、寂しくないだろう。
だって、またいつか、会えるからね。
作品名:ゆきだるまさんのおはなし 作家名:亜梨