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SORROW CURSE -序-

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「決定してるのか」
 そんな愚痴についトスィーアも笑う。
 その卵に宿る魂がルヴェリオーのものである限り、サフェイロスは嫌とは言えないし言わない。
 竜の卵の育成がどんなものかは知らないが、本人(竜?)も認めているのだから良いのではないだろうか。
 危険が伴ったとしてもサフェイロスは喜んで引き受けそうなきがする。
 そんなことをトスィーアが思っていると、サフェイロスの周囲がぼやけて見えた。
『…サフェイロス?』
 頭に直接響く声。
「!」
「ルヴェリオー?!」
 パッとサフェイロスが自らの左のほうを見たということはその辺りから声がしたのだろう。
 確かに段々ゆがみがその地点に集結しているようにみえる。
 そういえば、サフェイロスが卵を肩からかけているのも左側だ。
「・・・ルヴェリオー!」
 その声と同時だっただろうか。
 トスィーアにもそこに立つ青年の姿が見えた。
 ルヴェリオーの肉体を持つラサータラと同じ姿をしている。
 髪が幾分短いだろうか?
 水面に映る姿のように朧で時々ゆれている。
『私は…助かったのか?』
「ああ・・・!」
「ああ、サフェイロスが助けた」
 感動で声もでないサフェイロスに代わって遠方のラサータラが答える。
『ラサータラ・・・無事だったんだな。よかったよ』
 陽炎の様な姿でも人間と同じように振り返る。
「お前には酷い仕打ちをした。しかし、お前の存在があったからこうしていられる。ありがとう」
 驚いた表情をしたのはトスィーアばかりでなく、他の二名も同じだったようだ。
 そんな様子をおかしそうに見下ろしている。
「お前の思考が記憶となって私の思考に入り込んできて、私の行動もおかしいようだ」
 でも、その状態が不快と言うわけでもなさそうだ。
「さて、幾ら人間の器にいるとはいえ魂は竜のものであるから、長居してはこの地の呪いを受けそうだ。私は先に発つ。ではな」
「ちょっとまて、ラサータラ!」
 斜面を登ってゆこうとする姿に声を掛けたのはサフェイロスだ。
「何だ?」
「どうして・・・いや、また会えるよな?」
 それにラサータラは、またニヤリと笑ったようだった。
「”転生主体”の場所は何時何処でも私には分かる。それに、お前は既に私と契約を交わした。お前の居場所も手に取るように分かる」
「契約…・・・?名前か!?」
「私はお前の名前を口にした。お前は肯定の返事を返した。即ち了承としてその時点で契約は成立した。そして私は微かにでは有るが本来の竜の肉体とつながりが有る。すなわちその”転生主体”とも契約が成立したことになる」
「・・・は?」
「”転生主体”を育てるものとして関係が成立したわけだ。大事な私の肉体だ。折を見ては様子を見に現れるさ」
『サフェイロス、がんばってね』
 ルヴェリオーの苦笑が聞こえる。
「別にいいんだが・・・ある種の呪いだな」
「例え呪いだとしても、サフェイロスさんにとって悪いものではないのでは無いですか?」
 笑顔でトスィーアがサフェイロスを見上げると
「まぁ、そうかもなぁ」
 と思ったより軽い声が返ってきた。
「…そういうことだ。ではな」
 再度別れの言葉を口にして崖を上ってゆく。
 颯爽と退場するわけでも無いのが微妙ではあったが、そう思っているうちにすばやくその姿は消えていた。
『改めて、これからよろしくお願いします』
 ルヴェリオーがサフェイロスをトスィーアに向けて視線を真っ直ぐ向ける。
「ああ、よろしくな」
「よろしくお願いします・・・って?」
 何故自分も「これからよろしく」なのだろうか。
『だって、トスィーアついてきたいでしょう?』
「えっ!?」
『どの道サフェイロスだって宛ての有る旅では無いのだろうし、逆にこっちがついていったっていいよね?』
「まぁな」
「本当にいいのですか!?サフェイロスさんも!」
 たしかにこれからが気になりはしたが、本来自分は部外者なのだ。
 それがいきなり。
 ついていきたいと言おうとも考え始めてはいたが…
『トスィーアも嫌がっていないようだし、決定かな』
 


 こうして、三人というか二人と一つというか一匹というか、の旅は始まった。





<序・完>
作品名:SORROW CURSE -序- 作家名:吉 朋