「ぶどう園のある街」 第八話
「今日は楽しかったよ。今年は正月からいいことがあったからいい年になりそうだよ・・・また誘ってもいいかい?」
「私も楽しかったです。お互いにいい年にしたいですね・・・実はすこし迷っています。その、高見さんとの事は・・・いけないことなんだって考えてしまうんです。奥様がいらっしゃるでしょ・・・」
「そうか・・・そうだよな。こんな年で若いあなたを誘惑しているだなんて、身分不相応ですね。妻のことを言われると言い返せないけど、ぼく達はもう別居しているような状態なんだ。彼女は店も手伝ってくれないし、夫婦のことも無いからね。大西さんといると心が休まる。本当だよ。今のままでいいから時々逢って食事したり、ドライブしたり出来ないかなあ?」
「奥様とは・・・そうでしたの。身分不相応なんて言わないで下さい。高見さんは素敵ですよ。私こそ不細工で相応しくなんか無いです・・・」
「自分の事そんなふうに言うんじゃないよ。そう思っているだけで本当に不細工になって行くから。キミは若くて可愛いよ・・・今のままでいい、友達でいいんだ・・・また逢って欲しい」
「高見さん・・・私は高見さんのことが・・・好きです。初めて会ったときからそう感じ始めていました。奥様との事聞かされたからではありません。本当です」
作品名:「ぶどう園のある街」 第八話 作家名:てっしゅう