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年の数だけ

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山歩きを趣味にしてる男が、ひとりで山に入っておりましてな。
ところが下る道を間違えて、ひとつ隣の沢に入ってしもたんですわ。
道が無くなっていることにあわてましたが、もう登り返す気力がない。仕方がないので野宿をすることにし、その日は持ってる食べ物をすべて食べてしまいます。
朝になって、道なき道の草をかき分け、沢の中の石を跳んで渡り、小さな滝は木にぶら下がったりして下っていたのですが、もうシャリバテ寸前。
なんぞ食べれそうなもんはないやろか、
と探しながら歩いておりますと・・・
あったんですわ。

大きな茸を見つけました。どう見ても食べられそうな茸。
これ1本でお腹が膨れそうなほど大きな茸。
長さが30センチほどあります。太さは、そう・・ンんッ!

枯れ葉と枯れた小枝を集めて、火を熾し焼きました。
やっぱり火はよく通さないといけません。
焼いていると、いい匂いが漂い出します。
マツタケに似た匂いですな。もうよだれが・・ズズッ
じっくりとあぶりながら、少しずつ食べていました。
 
そこにやってきたのが樵です。
「ややっ、お前さんが食べているのは毒キノコだべな。はよう吐き出さんと」
しかし空腹のあまり、ぜ〜んぶ食べてしまいました。
「ああ〜おいしかった。なんで毒なんや? こんなおいしいもん、食べられるんが惜しいさかい毒やなんて、ゆうてんのやろ」
「それは『年の数茸』ゆうて、食べた長さの年になってしまうという毒キノコやがな。20センチやと20歳に。30センチやと30歳に」

食べてしもたもんは仕方ありません。帰り道を教えてもらって無事に家に帰り着きました。
作品名:年の数だけ 作家名:健忘真実