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~輪廻転生~

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今、教室には私と彼だけ。
思い切って私は彼を誘おうとした。

「ね、ねぇ、水樹君。良かったら一緒に帰らない?ちょっと聞きたいこともあるし。」

「・・・・・・勝手にどーぞ。」

うわっ、可愛げのない奴だなぁ。
そういうところは尚美にそっくりだなぁ。
もう少しは可愛げ見せろよー。

帰り道
私と彼は無言で道を歩いてた。
な、何か話題挙げなきゃ家に着いちゃうな。
とりあえず何か口にしてみることにした。

「水樹君はこの近くに住んでるの?」

「まぁ、最近引っ越してきたばかりだけどな。」

「そ、そうなんだ。何でこの街に?」

「・・・母が仕事で来たってのもあるし、昔ここに住んでたからってのもある。」

「へ、へぇ!?」

やっぱ、コイツ尚美の子供なんだ!
うわー、なにこの偶然ー!
ということは、尚美は結婚したのか。
可愛いもんなー。性格もいいし、スタイルもいい。
俺も・・・って、違うわ!


何かなぁ・・・。
全部思い出す前は普通の女の子って感じだったのに、
思い出した後は生前の自分を引きずってるのか俺って言っちゃいそうになる。
なるべくそれだけは避けないと。

うーんと唸りながら歩いてると、前から見知った人が歩いてきた。
見た瞬間、心臓がバクバクと鳴り始める。
記憶ってものは案外美化しているものだ。
私はふと立ち止まってしまう。

「あ、母さん・・・・・・。」

「水樹、おかえり。さっそく友達が出来たのね。」

「・・・別にそんなんじゃねー。」

20年経ってるのに、まだあの頃の面影が残っている。
佐々木尚美
その姿を見て私はついじっと見つめる。
・・・胸が少し成長している。
昔はCとかその辺だったのに、
今なんて軽くEはありそう。
自分のと比較してみた。
・・・ど、どうせ胸なんて邪魔になるだけだもん。

「・・い・・・と・!・・・おい!」

「ひ、ひゃひゃい!」

ビックリしてつい声が裏返ってしまった。
考え事をしていたから周りが聞こえなかったんだろう。

「な、何だよ!?」

「ボーッとしてるなよ。母の言ったこと聞いてたか?」

「聞いてないす・・・。」

「聞いてろよ・・・何考えてたんだ?」

「べ、別に胸の事じゃねぇし!」

「は?」

勢い余って本当の事を言ってしまった。
はは!別にいいけどね!
胸なんか無くても生きていけるし!
何か余計疲れたっていうか、なんていうか。

「楽しそうね。」

と尚美はクスクスと笑いながらこちらのやりとりを見ていた。
本当に嬉しそうな顔で、こちらを見てる。
そんな彼女の様子を見てるとこっちまで嬉しくなるな。

「女の子なのに男みたいな喋り方しちゃってねぇ・・。」

「そっ!それは・・・。」

「面白い子ね。あなた、名前は?」

「あ、加藤涼子です。」

「加藤・・・・・・」

加藤という言葉で色々思い出しているのだろうか、少し遠い目をしている。
そんな彼女の姿を見て私は目頭が熱くなった。
伝えたい。けど伝えられない。私には何もできない。
無力だからではない。
自分が達哉という男ではないから。
そんな事を考えていると逃げたくなった。
早く帰りたい

「あれ?涼子ちゃん帰るの?」

いつの間にか名前で呼ばれたし。
やっぱり変わらないなあ。
駄目だ。
これ以上、ここに居続けたら駄目だ。
そう自分に言い聞かせながら
すぐに後ろを向いて逃げた。
明日、水樹に何て言おうか。

「・・・・・・・逃げた。」

「逃げたわね。」

その後、水樹と尚美は逃げる加藤涼子の後ろ姿をただじっと見ていた。

作品名:~輪廻転生~ 作家名:桑無