アイラブ桐生・第三部 32~33
宜野湾市の市街地は、
普天間基地を真ん中にして、外郭をドナーツ状に取り囲んでいます。
沖縄戦で激戦地とひとつなった高台がありますが、
基地以外の限られた平坦地に、市民の住宅が所狭しと
肩を寄せてひしめき合っています。
商店が立ち並ぶ道路の向こう側には、基地の金網がそびえています。
市街地と基地を隔てる金網のむこう側には、見通すかぎりの
広大な基地の敷地が広がっています。
この巨大な滑走路を背骨のように持つ軍事基地は、宜野湾市の中心部に
広大な土地を占有しながら、さらに武力を持って
市民たちを威嚇しています。
宜野湾市は、いまだに問答無用の米軍の
支配下におかれています。
かつて何度となく、重大な犯罪を犯した米軍兵たちが、
この基地のゲートの中へ逃げ込みました。
その都度、うやむやのうちにそのまま祖国への逃亡を遂げています。
基地の金網とゲートの存在は、治外法権と無権利状態の象徴といえます。
「軍事政権下による占有支配地では、常に理不尽がまかり通る」
それこそが、戦後27年間にわたった
沖縄支配の実態でした。
そのゲート前で、
青年団員たちによる抗議行動が決行されることになりました。
決行予定時刻の少し前になると、つま先から頭まで全身赤ずくめの
ナイチンゲールが登場をしました。
髪まで赤く染めた優花です。
今日は、口紅まで燃えるような真紅で決めています。
遠目に見ると、まったく成熟しきった大人の
女性のようにも見えました。
「ほぉ~、・・・・おお!」
歩道で待機している青年団員たちの間からも、
思わず歓声があがります。
きっちりとお化粧をしたナイチンゲールは、
歩哨が直立しているゲートの前をお尻を振りながらゆっくりと
通過をしました。
数歩ほど通り過ぎた先で、ツンと立ち止まります。
悠然と振り返り、くるりと向きを変えました。
再びさきほど来た道を、お尻を振りながら戻りはじめます。
歩道上に居るこちらの様子を確認すると、
ゆっくりと赤いハンカチを振りはじめます。
それが、決められていた行動開始の合図です。
作品名:アイラブ桐生・第三部 32~33 作家名:落合順平