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アイラブ桐生・第三部 32~33

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 市民とMPの対峙は、さらに時間が経過をしても続きます。
赤いスポーツカーを取り巻いた人垣は、
少しずつ人々が入れ替わりました。
無言でハイタッチを交わしながら、お互いに
その立ち位置を交代していきます。
優花も近くに居た女性と交代をして、一度群衆の
後方へ下がってきました。



 「どうなるんだろう・・」


 「持久戦さ。
 あきらめたほうが負けになる。
 糸満で女性が轢殺された時には、市民たちは
 一週間も車を包囲したんだ。
 それでも事件は、結局はうやむやにされた・・・・
 人がひとり死んだというのに、軍法会議は
 被害者への保障は認めたものの
 当の運転手には無罪判決を出して、
 そのまま祖国へ送還をしてしまった。
 みんなは、その事件のことは良く知っている。
 闘わなければならないことを、
 たくさんの経験から、しっかりと学んでいるのさ。」


 優花の言う糸満事件。
それは1970年9月8日に、糸満町で起きた交通事故のことです。
糸満ロータリー付近で酒気帯び運転かつ、
スピード違反の米兵が歩道に乗り上げて
沖縄児人女性をれき殺してしまったという悲惨な事件です。


 地元の青年たちは、事故の直後から
充分な現場検証と捜査を、警察と米軍側にもとめました。
現場保存のため一週間にわたってMPのレッカー車を包囲し、
事故車の移動を阻止し続けました。
また地元の政治団体たちとともに、原因究明の
『事故対策協議会』も発足させます。
琉球警察を通じて米軍にたいし、謝罪と軍法会議の公開、
遺族への完全賠償などを強く要求しました。