名前のない唄
命
「私は小鳥。何もないこの場所に命を落としにきたのさ」
「小鳥?でも君はとても大きいじゃないか。」
「ふふ、君が小さいのさ。でも、小鳥と呼んでくれるかな。」
「ふぅん・・・小鳥くん、さっき命って言ったけど、それってなぁに?」
「今にわかるさ。見てな」
大きなその小鳥は大きく羽を広げた。そして耳に澄み渡る様なきれいな啼き声を上げた。
すると、トンッ、と音を立てて青い卵が産み落とされた。
その卵はゆっくりと下に落ちた。
そして何もなかった場所に、土が現れ、ずっと広がり、陸ができ、そして海ができた。
地面が盛り上がり、山となり、雲ができて雨が降って川ができ、海へ流れた。
陸に草花が芽生え、小さな樹が一本、伸びてきた。
少年はそれを口をぽかんと開けて見ていた。まるで時間がものすごい速さですぎてゆくようだった