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愛憎渦巻く世界にて

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第16章 ミカイ



 シャルルは、燃え盛る農村にいた……。その農村は、ゴーリ王国に焼き払われた、彼の故郷である村だった……。

 マリアンヌやウィリアムたちはどこにもおらず、彼の周囲にあるのは、燃え盛る家などの建造物や、こんがり焼けた焼死体3つだけだった……。
 彼が、おそるおそるその3つの焼死体を調べてみると、なんと、ウィリアムとメアリーとゲルマニアの焼死体のようだった……。燃え残っている顔の一部や身に着けていた服や武器から、それは間違いなかった……。
「そ…そんな……。マリアンヌ様は?」
彼は他にも焼死体がないかを調べたが、幸いなことに、その場にマリアンヌの焼死体は無かった。
「マリアンヌ様を探さなくちゃ!」
彼はそう自分に言い聞かせると、燃え盛る農村を走り回って、マリアンヌを探した。
「マリアンヌ様!!! マリアンヌ姫!!!」
彼は、マリアンヌが生きていることを祈りながら叫んでいた。

「シャルル様!!!」

 村の広場に来たとき、マリアンヌの声がした。彼女は、石畳の広場に放置されていた荷車の下に隠れており、場違いなほど無傷な様子だった。彼女は、荷車の下から出てきて立ち上がる。
「マリアンヌ様!!!」
彼は大丈夫そうな彼女の姿を見て安堵した。

   グサッ

 だが、その安堵はすぐに消え失せた……。どこからか飛んできた1本の矢が、彼女の胸を貫いたからだ……。矢に貫かれた彼女は、力なく仰向けに倒れこむ。一瞬の出来事であった。
「ひ…姫!!!」
彼は急いで彼女の元へ駆け寄り、姫を介抱した。「まだ死んでいない!!! 死なせるものか!!!」という強い思いでいっぱいだった。
 しかし、彼女は既に死んでおり、血の気が失せていっていることが感じられた……。彼女の胸に深く突き刺さった矢は、貫通して矢じりが背中から突き出ており、胸と背中から、激しい出血が競い合うように起きていた……。
「そ…そんな」
見開いたままの彼女の瞳には、呆然としているシャルルの顔が映っていた……。
「マリアンヌ様!!!」
彼は、これ以上無いほどの大声をあげた……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん