愛憎渦巻く世界にて
シャルルたちの馬車は、何度も右折したり左折したりした。何度も曲がるため、ゲルマニアはなかなか追いつけない。だが、彼女はあきらめなかった。
「逃げても無駄だぞーーー!!!」
負けず嫌いなゲルマニアの叫び声が聞こえてくる。
「あるんだなそれが!!!」
ウィリアムはそう叫び返す。
シャルルたちの馬車は、ある建物の門の近くに来た。ウィリアムが門を見てから、
「ラッキー! 門が開いたままだ」
ウィリアムが嬉しそうに言う。
「え? この中に入ってもいいのか?」
シャルルが不安そうに言った。
「いいから構わずに突入しろ!!!」
ウィリアムがよく元気そう言ったので、シャルルはそのまま馬車を、門をくぐらせた。
「やっぱり予想通りでした。しかし、不用心極まりませんね」
メアリーが後ろを見てから言う。
ゲルマニアは門の前で止まっていた……。どうしようもないという様子だ。
「クソーーー!!! 卑怯者めーーー!!!」
ゲルマニアが門の前で、これ以上ないほど悔しそうに叫んでいると、クルップたちがようやく追いついてきた。彼は、彼女の顔面パンチと落馬により、身体中が傷だらけであった……。
「ここに逃げ込みましたか……。中に入っては駄目ですよ」
「そんなことはわかっている!!!」
ゲルマニアはそう言うと、門の前から去っていった。クルップたちもそれに続く。
シャルルたちが逃げ込んだのは、タカミ帝国の大使館だった……。国際法により、ゲルマニアたちは無断で入れないのだ……。