愛憎渦巻く世界にて
ゲルマニアたちは王城に入った。そして、ゲルマニアとクルップは、マリアンヌを連れて、国王の元へ行った。
国王は謁見室におり、その両隣りに、王妃とゲルマニアの兄がいた。ゲルマニアは、クルップにマリアンヌを連行させ、ゲルマニアは国王に、マリアンヌを捕まえてきたことを報告した。国王は黙ってうなずいた。マリアンヌはぐすぐすと泣いていた。国王は一瞬だけ、マリアンヌが「生け捕り」になっていたことに驚いていた。
「さすが、私の妹だ!!!」
次期国王であるゲルマニアの兄が自慢気な口調で言った……。しかし、その場にいた全員が無視した……。
「父上、お願いがあるのです!」
ゲルマニアが国王に言った。クルップが「おいおい本気かよ」という顔で、ゲルマニアを見ていた。
「なんだ?」
「この姫の命と引き換えに、我が国とタカミ帝国との同盟を結びたいのです!」
「……なるほど、殺さずに連れてきたのは、そのためか?」
「はい!」
「……ダメだ。ムチュー王国の連中は、どうせ同盟を結ばれるなら、勝手に逃げ出した姫など死んでも構わないと思うだろう」
「なぜそう言い切れるのです!?」
ゲルマニアがムキになって問いただす。
「私が逆の立場ならそうするからだ。そうでもしないと、自国の民が激怒することになる」
国王は静かな口調でそう言った……。
国王のその言葉に、ゲルマニアはショックを受けた……。 つまり、ゲルマニアがマリアンヌと同じ状況に陥った場合、ゲルマニアは見殺しにされるということなのだ……。
「明朝、その姫をギロチンにて処刑する!」
国王はそれだけ言うと、謁見室からさっさと出ていった……。哀れなマリアンヌは、城の兵士たちによって、牢屋へと連れていかれた。
ゲルマニアは呆然とその場で突っ立っていた……。
「あの……」
クルップは、ゲルマニアを気遣おうとした。しかし、ゲルマニアに睨まれたので、彼も突っ立っていることにした。
「大変です!!! 敵が城下町へ入ってきたとのことです!!!」
そのとき、謁見室に王室騎士団の1人が飛びこんできた。
「なに!!!」
それを聞いたゲルマニアはそう叫ぶと、
「クルップ!!! 出撃だ!!!」
クルップに命令を下す。
「ハッ!!!」
彼は準備をしに向かう途中、ゲルマニアは出撃で気を紛らわせようとしているのだと感じていた……。