愛憎渦巻く世界にて
「父に会ったのですか?」
マリアンヌが興味深そうに尋ねた。
「そうよ」
メアリーがウィリアムの代わりに答えた。
「元気そうでしたか?」
「そりゃあ、もう。ウィリアム様を言い負かして泣かせるぐらいですもの!」
メアリーが半笑いでそう言うと、
「泣き落とそうとしただけだ!!!」
と、ウィリアムが強く主張した……。
「父は頑固なので……」
メアリーはそう言うと、後ろを振り返った。国王である父や家族と別れるのがつらいのだろう。
そして、シャルルたちは、鍾乳洞を出ることができた。鍾乳洞の外には誰もおらず、目の前には森が広がっていた。夜のため暗かったが、星々や月が彼らをそっと照らしてくれる。
鍾乳洞の上のほうを見ると、その先に王城と城下町が見えた。さまざまな光で、美しい夜景だった。シャルルたちは、その美しい夜景に見入った。追っ手のことを忘れてしまうぐらい、その夜景は美しかったのだ。
「大丈夫ですか?」
「え?」
シャルルの声で、マリアンヌは自分が泣いていることに気づいた。彼女の頬を涙が静かに流れていた。彼女は、その涙を静かにふいた。
「すみません。大丈夫です」
彼女はそう元気そうに言ったが、シャルルは自分がしたことは、彼女にとって良いことだったのか悩んだ。
「さあ、姫。美しい夜景を見られたことですし、地下室に帰りましょう」
そんなとき、ウィリアムがそう笑顔で言った……。
「え?」
マリアンヌとシャルルは思いっきり驚いた……。ただ、メアリーは夜景を見たままだった。
「冗談ですよ!」
マリアンヌとシャルルが本気で驚いたことを、ウィリアムは笑いながらそう言った……。
マリアンヌとシャルルも、自分たちが本気で驚いてしまったことに笑い始める。メアリーは、やれやれといった感じで、苦笑いしていた。