愛憎渦巻く世界にて
「姫!!! 開けてください!!!」
シャルルがマリアンヌがいる地下室のドアを叩きながら叫んでいた。どうやら、マリアンヌが中から鍵をかけたようだ。
「シャルル様、もういいのです!」
中からマリアンヌの声が聞こえてくる。彼女は泣いているようだった。
「もう一度、説得してみせますから!!!」
シャルルはマリアンヌを励まそうと言った。
「その必要は無いぞ」
シャルルの後ろから、ウィリアムの声がした。彼はシャルルを押しのけ、
「マリアンヌさん、極秘に我が国で保護されるというのはいかがでしょうか?」
シャルルがはっとした表情で、ウィリアムを見る。その横にいるメアリーは、やれやれという調子でウィリアムを見ていた。
「いいのか?」
シャルルは、信じられないという口調で、ウィリアムに聞く。
「これも皇子としての務めだよ」
ウィリアムは、どや顔でそう答えた……。
「ぼくも付いていっていいのか?」
シャルルが心配そうにそう言うと、
「当たり前でしょ! アンタが始めたことなんだから!」
メアリーがきっぱりそう言った。
少しして、鍵を開ける音がした。そして、地下室のドアが開いた。ドアの前に、マリアンヌがしっかりとした表情で立っていた。
彼女は決心したようだ。シャルルやウィリアム達とともに旅立つということを……。