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愛憎渦巻く世界にて

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 この物語の舞台となる世界は、赤道を挟んだ南北の2つの大陸で構成されており、中世や近世のヨーロッパのような世界だった。そのうちの1つの北の大陸には、その世界で最も強く、繁栄している『タカミ帝国』という国があり、もう1つの南の大陸には、『ゴーリ王国』と『ムチュー王国』という2つの国があった。そして、その2つの大陸の間には、赤道が走っており、北の大陸と南の大陸とを分けていた。

 南の大陸にある2つの王国は、両国とも、世界一の座にいるタカミ帝国と同盟を結びたがっていた。この2つの王国は、昔からとても仲が悪く、タカミ帝国と組んでもう片方の王国を潰したいと考えていたのだ。
 帝国は、どちらの王国と同盟を組んでやってもいいと考えていた。片方の王国を潰せば、自国の領土をその分は拡大できるからだ……。

 たまたま、2つの王国には王女が1人ずつおり、両国は自国の王女を、タカミ帝国の皇子の結婚相手にしようと競い合った。政略結婚によって、帝国との確固たる同盟を結ぶためだ。皇子にも悪いが、どちらの王女と結婚するかは、政治的判断による。

 しかし、帝国は、どちらの王国と組むべきかで悩んだ。正確な資源の調査は不可能(どこのバカな国が、自国に侵略してくるかもしれない国に、我が国にはこんなに豊富な資源がありますと教えるだろうか?)だ。ようやく集めることができた情報にしても、国力や領土面積などによる総合評価がほぼ五分五分であることしかわからなかった。そこで、王女が美しいほうにした。
 だが、どちらの王女も美少女で、帝国内部でファンクラブのようなものができてしまうほどややこしいことになり、決めることが困難であった……。
 そこで、帝国の皇帝は、両国の王女を見合いとして呼びつけ、皇子に結婚相手を見合いで決めさせようとした。ところが、見合いを終えた皇子は、とても決められないと言い張り、両方とも破談となった……。



 タカミ帝国は散々悩んだあげくに、ある決定方法を思いついた……。帝国はとりあえず、2つの王国にそれを提案してみた……。

 その方法とは、2つの王国同士が戦い、先に相手の王国の王女を殺したほうが勝ちというものだ……。そして、勝った王国の王女と王子は結婚し、その王国と帝国は同盟を結ぶというわけだ……。
 実は、タカミ帝国は半分冗談で、この方法を両国に提案したのだが、両国ともそれはいい方法だと賛同してしまった……。それを聞いたタカミ帝国は、「じゃあ、それでいこう。ぶっちゃけ、どっちでもいいし」と適当に了解した……。
 そして、2つの王国の間で、王女の命を巡る戦争が始まった……。

 開戦当初は、王女を殺すための暗殺者を相手国に送りつけ合うレベルの静かな戦争だったが、次第に戦争は本格的に激しくなる……。その結果、両国中の人々が戦争に巻きこまれていった……。
 戦争に巻きこまれた人々は、すぐに愛国心で満ち溢れ、自国の姫を愛すると同時に、敵国の姫を憎んだ……。

 この物語は、そんな愛憎渦巻く世界で繰り広げられる……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん