アイラブ桐生・第三部 30~31
優花と二人で時間を見計らいながら、見送りに出掛けました。
優花は相変わらずのストリッパー稼業で稼ぎつづけています。
一方の私はおバァのところに居候をしながら、
バー「ユーコ」に勤めました。
優花は帰りの時間になると必ず「ユーコ」に顔を出します。
内地の本格的な和食が食べたいために、あれこれ作れとせがんでいます。
気がつけばいつの間にか、すっかりと妹気取りでした。
勝代さん(ユーコのママです)いわく、
「もう、すっかりお似合いの兄妹です!」
一体どういう意味でしょうか・・・・ニュアンスが微妙です。
優花は今日も大きなストローハットに、お気に入りのサングラス、
短パンといういでたちで颯爽と私の前を歩いていきます。
この子はなぜか、人の後ろを歩くことを好みません。
いつでも人の前を歩き回り、またいつのまにか視界から消えてしまいます。
ロビーまでは一緒だったものの、やはりいつものように、
いつの間にか消えてしまいました。
そのうちに現れるだろうと、三人で立ち話をしていたら、
突然、花束を抱えた優花が現れて、
あっというまに私の背中へ張りつきました。
「わたしの兄貴をとらないで~」
「あら、優花ちゃん
来てくれたんだ、お見送りをありがとう。
群馬は置いていくから、
面倒を、よろしくお願いしますね~」
「はい。
こちらこそ、たいへんお世話になりました!
兄貴は大事にお預かりいたしますので、
心おきなく旅路についてください。
来年春になると、沖縄は(本土に)復帰しますが、
私の兄貴はもう、帰らないかもしれません。」
「あら、言ってくれるわね。
百合絵が聞いたら、たいへんなこことなるわよ」
「・・・・百合絵、誰? その人」
「東京で、群馬の帰りを待っている、わたしたちの姐ごです。
あら、優花ちゃんは知らなかったの?
もう二人は、前途を約束した、
切っても切れない恋仲なんだから」
「こらこら、
もうそのくらいにしてあげなさい。
いい加減にしないと、優花ちゃんが可哀想」
すっかり笑顔の消えてしまった優花を見て、
優子が助け船を出してくれました。
消沈した優花が背中に隠れたまま、花束だけを優子に差し出します。
優子が近寄ってきて、今にも泣き出しそうな
優花を抱きしめました。
「ありがとう優花ちゃん。
一年間だけ、沖縄が返還されるその日まで群馬のことはお願いね、
あなただけが、頼りだわ。
しっかりと、見張っていて頂戴。
この人ったら、見かけによらず無鉄砲だから
手綱を緩めたりするとすぐに暴走をしますから、
ちゃんと押さえておいて頂戴ね。
お土産に、綺麗なお花をありがとう。
私は伊江島だから、また会えるわね。
あなたに会えて、私たちもとても楽しかった。
又会いましょうね、ありがとう」
作品名:アイラブ桐生・第三部 30~31 作家名:落合順平