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阿良々木暦
阿良々木暦
novelistID. 34822
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俺と妹の波乱な日常-4-

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俺は目の前に広がる暗闇を見渡した。あらゆる方向365°を見渡しても暗黒な風景。俺は考える・・・そうか俺は買い物に行った帰りに小鳥遊をかばってナイフで刺されたのか。俺は死んだのか。声が聞こえる。
「お―ちゃんがそん―を」
途切れ途切れにしか聞こえないが礼奈の声か。今度は
「でも・・・でもそのせいで悠一君が・・・」
だんだん声がはっきり聞こえるようになった。この声は小鳥遊か。
「本当に、本当にごめんなさい」
小鳥遊は泣いているのか。やめてくれ、俺がやりたかった事をやっただけなんだ。俺がそう声に出そうとしたところでその声は届かない。俺がもどかしい思いをしていると
「謝らないで、小鳥遊さん。お兄ちゃんも、謝られても困ると思うよ・・・」
すると、小鳥遊が言った
「だって、そのせいで悠一君が。私なんかを庇ったばっかりに・・・」
「それに、小鳥遊さん。お兄ちゃんなら必ず回復する。今はお兄ちゃんの回復を待とう。ね」
「うん・・・そうだね私も信じてる。悠一君が必ず、必ず回復するの」
俺はまだ死ではいない。俺はそう思った。
「小鳥遊さん、そろそろ帰ったほうがいいよ。親の人、心配するんじゃない」
「・・・分かった。明日また、ここに来てもいいかな・・・」
「うん。じゃあまた、明日」
小鳥遊は居なくなったのか、それ以来小鳥遊の声は聞こえなくなった。誰かが泣いている。必死に堪えようとしているが嗚咽が漏れる。
「っ・・・うっ・・・なんで、なんでお兄ちゃんがこんな目に・・・お兄ちゃん戻ってきてよ・・・お兄ちゃん」
礼奈が泣いている。2人の女の子を泣かせるなんて、最低だな。俺はまだ死ねない。死んではいけない。そうだ死んではいけない。俺はそう思い立ち上がった。すると目の前が暗闇から一筋の光の道が。俺はその光に吸い込まれるようにして歩いていった。次第にその光は一層輝き、俺は眩しくて目を閉じた。光が収まった。


俺は目を開けた。驚くほど瞼が重い。目を開けると、白い天井が目に入った。ここは、さっきまでいた暗闇ではない。ここは・・・病院だ。俺は辺りを見渡した。すると俺のベットに顔を伏せて泣いている礼奈の姿があった。俺は声を掛けた。声がうまく出ない。
「―奈、礼―」
俺が呼びかけたら、礼奈がゆっくりと顔をあげ、一瞬にして顔が明るくなり俺に抱きついた。
「お兄ちゃん!よかった!」
「痛い」
まだ刺されたところが完全に治ってはいないのか、焼けるような痛みがある。俺が呟くと申し訳なさそうに礼奈が言った。
「ご、ごめん。大丈夫?」
「ああ、まあなんとか喋れるくらいには大丈夫だ」
「あっ、そうだ今、お医者さん呼んで来るからまってて」
そう言うと礼奈は、駆け足で病室を出て行った。しばらくすると、二十歳前後の医者というよりは科学者然としたシャープなメガネをかけた男が礼奈と一緒に入ってきた。二十歳前後の男は、俺の傍に来て言った。
「君の回復力は目を見張るものがあるね。あんな傷でしかも短時間で回復するなんて。・・・あっ、自己紹介が遅れたね、僕は片桐。片桐和人。君を、オペした医者だよ。」
人懐っこそうな笑みを浮かべ、自己紹介をした。俺は、お礼を言った。
「助けていただきありがとうございます」
「いやいや。しかし君が、ここの運ばれたときはもう、危険な状態だったよ。ナイフが左腹部に突き刺さっていてね。なんで、こんなことになったか説明してくれないか」
俺は迷った。この人に話していいものか。俺を助けてくれたんだし、言ってもいいか。
「実は―――」
俺は、大まかにあの夜のことを話した。すると片桐先生は、言った。
「やはりか。最近、多いんだよ。通り魔の犯行らしいんだけど・・・」
「そうなんですか」
俺も一応は知っていた。その通り魔か。俺を刺したのは。
「ああ、そうだ。今日は、ここに泊まっていくといい。君の妹さんを一緒に」
片桐先生は、提案した。礼奈を同意した。
「そうだよ、今日はもう遅いし。ね、そうしよう」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


片桐先生は、病室を出て行った。礼奈は俺に抱きつきながら言った。
「もう、こんなことはしないでね」
「ああ、分かった。もうしないよ」
俺の言葉を聞いて礼奈は安心したようだった。
「そろそろ、寝るか」
「うん、そうだね。じゃあ、一緒にね」
そう言って、俺のベットに礼奈が入ってきた。まったく。
「おやすみ、お兄ちゃん」
俺に最高の笑顔で呟き、礼奈は眠りについたようだった。俺は日付を確認するべく、携帯をさがした。あれから、3日が経っていたようだった。礼奈はその間付き添ってくれたのか。それじゃあ、眠くもなるな。俺は日付を確認し終え、眠りについた。


「うっ―――」
光が俺の目を刺激した。朝か。俺は目を擦りながら体を起こそうとした、が、礼奈が俺にくっ付いて起きれない。俺は礼奈を起こした。
「おい、礼奈。朝だぞ」
「―――」
起きないな。俺は礼奈の頬を引っ張った。
「―――」
やはり、起きない。今度は、頬を軽く叩いた。
「―――」
そこまで疲れていたのか。無理も無いな。3日間俺に付き添ってくれていたんだから。俺は最後の手段として、礼奈の柔らかそうな唇に自分の唇を重ねた。
「!!!」
礼奈が目を見開いた。完全に起きたな。俺は礼奈が怒ると思っていたが。
「んっ―――」
逆に礼奈が、唇を押し付けてきた。柔らかいな、礼奈の唇。しばらくすると、礼奈が唇を離した。そして、最高の笑顔で言った。
「おはよう。お兄ちゃん」
俺は自分が、やったことが恥ずかしくなり、顔を赤くした。そして、照れながら
「お、おはよう礼奈」
俺は思った。やっといつもの日常が戻ってきた。礼奈が言った。
「あっ、そうだ。昨日言い忘れてたんだけど、叔父さんから連絡があって、お兄ちゃんが目を覚ましたら連絡して欲しいって、言ってたよ」
「ああ、そうだな。晶彦さんにも心配させたし連絡するか」
俺は携帯を手にとり、電話した。
「あっ、もしもし。悠一です。ご心配をお掛けしました。」
「体の方は大丈夫かね。ナイフが突き刺さっていたから心配したのだ」
俺は、ふと疑問に思った、が話を続けた。
「はい。片桐先生も、助かったのが奇跡だと言っていました。」
「ほぉ、片桐君か。彼は、いい腕を持っている・・・」
「えっ!片桐先生を知っているんですか?」
俺は尋ねた。俺の疑問に晶彦さんは答えた。
「もちろんだ。彼は私が経営している病院でも、3本の指に入る医者だからな」
あぁ、そうか。晶彦さんは、病院経営にも力を入れてたな。
「そういえば、君を刺した犯人が、指名手配されていたようだぞ」
話題をいきなり変えたので、何を言っているのか、いまいち分からずに聞いた。
「犯人?」
「ああ、名前はなんと言ったかな・・・、そうだ佐々木翔太といったかな?」
「そうなんですか・・・」
俺をナイフで刺した犯人・・・佐々木翔太というのか。
「早く捕まって欲しいものだな」
晶彦さんが言った。俺も同意した。
「はい。警察には頑張って欲しいです」
晶彦さんは何かを思い出したように言った。