ありもしない話に腹を立てている
森にも春がやってきました。
大きな木の根元に三匹の子リスのきょうだいが集まって、なにやら言い争いをしています。
子リスでも乗れる自転車が一台しかなくて、それを取り合っているようです。どの子も同じように、なかなかあとには引きません。
そこへ通りかかった狐のお兄さんが、じゃんけんで決めたらどう、といいましたが、うなづいたのは一匹だけで、あとの二匹は首を横に振ります。狐のお兄さんは困ってしまいました。
まあ、あなたたちどうしたの、とそこにヤギのおばさんが、足を止めて話に加わりました。狐のお兄さんからわけを聞くと、ヤギのおばさんはいいました。
じゃあ、こうしましょう。いまここには狐のお兄さんとおばさんを入れて五人いるから、多数決で決めるのよ。はい、じゃんけんがいいと思う人手を挙げてえ。
三本の賛成票をもくろんでいたヤギのおばさんは、ここでこけてしまいした。子リスの手が一本もあがらなかったからです。
まあ、あなたたち、まだ子どもだから、多数決の意味がよくわからないのね。とくにあなたね、はじめは賛成してたようだけど。こんどはどうしたのかな。
おとなたちは手をこまぬき、子リスたちはふたたび言い争いをはじめました。
大きな木の根元に三匹の子リスのきょうだいが集まって、なにやら言い争いをしています。
子リスでも乗れる自転車が一台しかなくて、それを取り合っているようです。どの子も同じように、なかなかあとには引きません。
そこへ通りかかった狐のお兄さんが、じゃんけんで決めたらどう、といいましたが、うなづいたのは一匹だけで、あとの二匹は首を横に振ります。狐のお兄さんは困ってしまいました。
まあ、あなたたちどうしたの、とそこにヤギのおばさんが、足を止めて話に加わりました。狐のお兄さんからわけを聞くと、ヤギのおばさんはいいました。
じゃあ、こうしましょう。いまここには狐のお兄さんとおばさんを入れて五人いるから、多数決で決めるのよ。はい、じゃんけんがいいと思う人手を挙げてえ。
三本の賛成票をもくろんでいたヤギのおばさんは、ここでこけてしまいした。子リスの手が一本もあがらなかったからです。
まあ、あなたたち、まだ子どもだから、多数決の意味がよくわからないのね。とくにあなたね、はじめは賛成してたようだけど。こんどはどうしたのかな。
おとなたちは手をこまぬき、子リスたちはふたたび言い争いをはじめました。
作品名:ありもしない話に腹を立てている 作家名:中川 京人