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中川 京人
中川 京人
novelistID. 32501
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ありもしない話に腹を立てている

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森にも春がやってきました。
 大きな木の根元に三匹の子リスのきょうだいが集まって、なにやら言い争いをしています。
 子リスでも乗れる自転車が一台しかなくて、それを取り合っているようです。どの子も同じように、なかなかあとには引きません。
 そこへ通りかかった狐のお兄さんが、じゃんけんで決めたらどう、といいましたが、うなづいたのは一匹だけで、あとの二匹は首を横に振ります。狐のお兄さんは困ってしまいました。
 まあ、あなたたちどうしたの、とそこにヤギのおばさんが、足を止めて話に加わりました。狐のお兄さんからわけを聞くと、ヤギのおばさんはいいました。
 じゃあ、こうしましょう。いまここには狐のお兄さんとおばさんを入れて五人いるから、多数決で決めるのよ。はい、じゃんけんがいいと思う人手を挙げてえ。
 三本の賛成票をもくろんでいたヤギのおばさんは、ここでこけてしまいした。子リスの手が一本もあがらなかったからです。
 まあ、あなたたち、まだ子どもだから、多数決の意味がよくわからないのね。とくにあなたね、はじめは賛成してたようだけど。こんどはどうしたのかな。
 おとなたちは手をこまぬき、子リスたちはふたたび言い争いをはじめました。