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あみのドミノ

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世間では中年のおじさんは若い女の裸を見たがるとか、すぐ触りたくなるとか思っているらしいけど、そうではないんだ。と私は叫びたい気持ちになった。若い女性の素晴らしさを、20歳の男にはあまり感じられない所までよく解るようになっているのだ。そう美術品をみるように。

「このまま、ゆっくり歩くのもいいね」と私は亜美乃を見る。長めの睫毛が横からハッキリ見える。小さく形のよい鼻、亜美乃はもうちょっと大きいといいなあと言っていた小さな口。じんわりと幸福感が起き、すぐにそれが全部自分のものではないという思いがもたげてきて、頭をかきむしりたい気持ちになる。
「あーあ」と口に出た。
「ん、なーに」
亜美乃がどうしたのという顔で私を見る。

「きれいになっちゃって」と私は少しすねたような顔をして亜美乃を見た。
「お父さんも、渋くなってきたよ」咄嗟に亜美乃も言い返す。
「誰がきれいにさせたんだろうね」私は思わせぶりな口調で言う。
「私? 生まれた時から」と言って亜美乃は笑った。
私は苦笑するしかない。

「実はね、しちゃったんだ」
「えっ」

突然の亜美乃の言葉に私は立ち止まった。亜美乃の腕が傘を掴んだ腕をひっぱる形になって傘が傾く。細かい雨が顔にかかった。亜美乃は私の顔を見て、それからちょっと下を向く、その顔にも雨粒が降り注ぎ、亜美乃は目をしかめた。それから傘を差し直しながら
「キス」と短く言った。

作品名:あみのドミノ 作家名:伊達梁川