修学旅行
はじめての国会議事堂
そこは、
テレビでよく見る日本の中心。
『工事中』
中学一年生、春。誰もが一度は授業で見学に訪れるという、日本の中心。特徴的な屋根、重量感溢れる堂々とした佇まい。テレビで見るよりもずっと印象の良い姿だと思った。
見学の最後の締めくくり。
クラスの集合写真。
建物前の広場。並ぶ笑顔。
「あ、工事してる」
修学旅行が綺麗な思い出となり、ありふれた集合写真が私たちの手元に届いたころ。
写真の隅、国会議事堂の屋根の端に目を向けると、そこには揃いの作業着を身に纏った人影と、線のように細い足場。忙しそうに働く人の姿が、連なる学生らの頭の上、しっかりと写っていた。
工事中。
その瞬間、それは何か特別な集合写真のような気がした。
あれから時は過ぎ、私は今東京の大学に通っている。つい先日、部屋の掃除をしていたら偶然懐かしいものを見つけてしまった。
みんなが並んでいる、三列に。
二列目、左から四番目。
片想いのひと。
一列目、右から二番目
大嫌いだったひと。
中央、担任。丸めがね。
三列目、右端。
私。
その、斜め上。
屋根の上。
「工事中」
組んでは壊し、壊しては組むを繰り返した時代。私は今、何を組み、何を壊しているのだろう。すっかり落ち着いてしまった現在。瞬間、静電気のようなものが身体を貫いた。
まだ続いているのかもしれない。
この工事も私の修学旅行も。
その日の夕方、実家から制服が送られてきたものだから。