修学旅行
はじめにご挨拶
お金と、
時間と、
心に余裕があるとき、
人は一体何をするのだろうか。
旅。
お金と、時間と、心に余裕があるとき、私は無償に旅に出たくなる。 だが、私の行きたい旅というのはちょっと特殊な旅。もう二度と行けない、でも誰もが経験した旅。
もう一度。もう一度。
修学旅行。
白いシャツ。
紺色のスカート。
履きつぶした茶色のローファー。
教室の中が全てだった毎日に、
突然やってきた、三泊四日。
全てが新しく見えた。
友人までもが新鮮で、
刺激的な存在だった。
眠るのが惜しい夜、
どうでもいい話を延々と。
ここに、十人の人間がいるとする。彼女たちは東京の大学に通う女子大生だ。
もし、
彼女たちが、
もう一度、
あの旅に出ようとするならば、
それは一体、なぜだろう。
懐古的に。
自主的に。
もう一度。もう一度。
もういちど。
かつて修学旅行で東京を訪れた十人の記憶。彼女たちが訪れた東京の名所をそれぞれ一カ所ずつ。計十カ所を、当時のエピソードを交えながらゆっくり巡ろう。
この物語を読み終えたとき、あなたは一体何を思うだろうか。もしも、重い腰を上げ自分の過去と向き合おうと思えたなら。
それはあなたが、
十一人目の旅人になれた証。