拾った人形(9/4編集)
……その後、孫四郎と運転手は別れたが、最後までその場所には自分達二人しかいなかった。それ以外には、誰もいなかった。
「……とまぁ俺の話はこんなところだな。ま、信じる信じないはお前ら次第だけどな。あー、別に怖い話ってわけでもなかったか。どっちかっていうと不思議系で――ん? 人形? ああそうだな」
結局、その日はそのまま家まで連れて帰った。警察まで寄る気力も体力ももう無かったから。
それで翌朝、彼女は載せておいたテーブルの上から跡形もなく消えていた。以来、どこを探しても見当たらなくて、仕方がないからそれっきり。
ただ、それから何度か色んなとこで死にそうな目、危ない目に遭ったが、そのたびに優しそうな微笑みを浮かべた彼女を見かけた。
「……きっとまた、俺のことを守ってくれてたんだろうな。そうだ、良ければ今度彼女に会いに来なよ。客が来ると結構な確率で彼女も出てくるし」
「――歓迎するぞ?」
作品名:拾った人形(9/4編集) 作家名:狂言巡