「ぶどう園のある街」 第七話
自分の知らない世界がここにあると美也子は思っていた。そしてその世界に自分も飛び込んでゆくことをうっすらと考え始めていた。
それは好きになり始めていた高見が結婚していたからだ。
高見が唄っている時間ずっと聞き惚れていた。さすがに上手かった。他の客からも唄い終わって「素敵」とか「お上手ね」とか声を掛けられていた。自分は絶対に唄えないと思った。
「大西さんも歌いなさいよ。この本から歌える曲探して・・・どう?」
「私は結構です。高見さんの歌聞かせていただくだけで楽しいです」
「そうなの?歌うのも楽しいよ、きっと」
「いえ、聴くだけにします」
数曲高見は歌って美也子を家まで送っていった。
作品名:「ぶどう園のある街」 第七話 作家名:てっしゅう