「哀の川」 第二十六話
第二十六話
246を渋谷へ走らせている車内で、純一は由佳に携帯から電話をした。今日は遅くなったから逢えないと言ったのだ。残念そうに由佳が言うので、明日朝から逢う約束を伝えた。杏子は純一の隣に座ってその電話を聞いていた。全く何も感じなかったかと言えばうそであるが、嫉妬のような感情は無かった。正直由佳はとても可愛く感じていたし、純一とは似合いだとも思っていたから、仲良くしてくれたらそれで良いと自分に言い含めていた。
電話を終えた純一に話しかけた。
「純一、由佳さんね。明日逢うの?」
「うん、今日帰ったら逢おうって約束していたんだけど、こんな時間だから、明日にしたの」
「そうね、逢えるって思っていたから由佳さん残念そうに言ってなかった?」
「えっ?解るの?・・・そうだよね、そう言ってたよ」
「同じ想いの女性だもの・・・麻子さんだってわかるわよ」
「もっと早く電話をしてあげればよかったって反省してる」
「そうよね、その気遣いが必要だったわね。明日はずっと一緒に居てあげなさいね」
「うん、そうするよ」
「これね、必要じゃないかも知れないけど、一つあげる」
作品名:「哀の川」 第二十六話 作家名:てっしゅう