お慕い申しております・・・(6/10編集)
源柚姫(ミナモト・ユズキ)が今は亡き両親から受け継いだの家の庭には小さな蔵がついていた。中身は古い家財道具や、普段は使わないようなものを仕舞ってある。
それで今年の春先、久しぶりにそこの整理をした。
虫干ししようと並べていたら、思いの他たくさん物が出てきて骨が折れたものだ。そして、蔵から出した品の中に見慣れない木箱が一つあった。
桐でできたなかなか上等な物で、赤い組紐が掛けてあった。埃を払って箱を開けてみると、ガラスケースに入った、少年の人形がいた。金色の頭髪に緑の硝子の目玉、青色の軍服をきている。ほとんど傷んでいなくて、とても年代ものには見えなかった。
「でも、私、その人形に全然覚えがなかったの」
自分で買った覚えはそれこそなかったから、誰かに頂いたのだろうが、それがいつのことなのか全く思い出せない。蔵に仕舞った記憶もない。
それでも、本当に可愛らしい人形だったので、ケースから出して居間に飾った。ガラスケースは角に罅が入っていたので捨てた。
作品名:お慕い申しております・・・(6/10編集) 作家名:狂言巡