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てっしゅう
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「ぶどう園のある街」 第六話

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「本当ですか?是非ご一緒しますよ。6時ぐらいに交代のアルバイトが来ますから、それ以降なら大丈夫です」
「そうですか、じゃあ明日また・・・良いお年をお迎え下さい。失礼します」
「大西さんも良いお年をお迎え下さい」

帰り道美也子は自分がわからなかった。妻子ある男性を食事に誘うということがどういうことなのか・・・どうなりたいと思って誘ったのかはっきりと考えていたのではなかった。思いつきでそう言ってしまったのだ。
紅白を見終えて入浴を済ませて、明日出発する母と父の準備を手伝って寝床に入った。

「高見さんが・・・好きなのかも知れない」漠然と自分の中でそう感じていた。
生まれてこの30年間男の人を好きになった記憶がなかった。恋愛を避けていたわけではない。縁がなかったということなのだ。
決して美人ではないから言い寄られることはなかったが、自分から誘いについてゆくようなこともしなかったので、経験しないまま母の介護も加わって今日まで来てしまった。本当は好きな人と時間を過ごしたいという思いが封印されていたのかも知れない。
高見は恋愛の対称にならない妻帯者ではあったが、男性としての魅力は十分に感じられた。好きと言う感情はその想いだけは純粋だから垣根がない。隣の木に生っている果実であっても欲しいと思うことだけは・・・勝手なのだ。