ヘリテイジ・セイヴァーズ-未来から来た先導者-(前半)
「異霊空間(コンファインド・スペース)、解除!!」
奇妙な呪文の類を発すると、彼女の左腕にある、青い球体が革製の赤いリングで固定されているものが青い光を放ち、彼女を中心に青いサークルが広がる。
「えぇぇぇえ!?」
この展開に光大は、ただ驚くことしかできない。
「いたぞ。お前の後ろだ」
「え」
彼女に言われるがまま、後ろを振り向く光大。すると、
「!」
もはや、光大の想像を超える―葦貴と昨日やりまくったゲーム、『妖怪無双』に出てくるようなものがいることに、口を大きく開くものの、声がでない。
俺は、幻想と現実を彷徨っているのかと、今の自分がいる位置―狭間に立っていることに唖然とする。
小さな雲の上に、小さな子供が乗っているのだ、女性に向かってニヤけた表情はまさにイタズラ小僧。
「キーーーーーーッ!!」
「うわぁっ!!」
子供は、風を巻き起こしながら、女性に向かって走り出す。まるで、学校での事件と同じように!
こいつが原因か! と、光大は悟る。
しかし、さっきは何も見えなかったのにどうして? と疑問が募るばかりだ。バトル漫画のような、この展開すらも。
風が巻き起こる中、女性は冷静に、
「ふむ。超常異霊《ポルターガイスト》、カマイタチか」
と、子供が何者であるのか分析する。
「女ばかりを狙う、幼稚なド変態小僧か。この手で制裁を与えなくてはな」
「せ、制裁!?」
「ああ。具現化せよ、対霊武器(バスター・ウェポン)!」
すると、彼女の左腕の青い球体部分から、キラキラと武器が具現化される。ボウガンだ。
「はあぁぁぁっ!!」
バシッ!
女性は狙いを定めて、ボウガンに装着されている矢を発射する。
「ウキュゥゥゥ~」
ドスッ、と重苦しい音を立てて、カマイタチと呼ばれたイタズラ小僧は、倒れてしまう。そして、魂が抜かれたかのように紫色模様のお化けのような形をとり、空へと還ってゆく。
「ふう。なんとかなったな」
女性はホッ、としたかのように前髪をパサッ、と払う。
「・・・・・・」
この展開の結末まで、光大はポカーンと彼女を、ただ見つめることしかできなかった。
これは、幻想!? それとも現実!? ポルなんたらってなんだよ!? とさまざまな思考が頭の中でぐるぐるぐるぐると回転する。
一体何なんだよ、これは・・・・・・。
今、戦いに決着がついた瞬間―これは好機だ。全部問い詰めて、ここが現実(リアル)
かはっきりさせてやる! ここで恐れたら男じゃねぇ!
気合いを入れて、彼女のもとへと向かう光大。
しかし、彼が彼女の方をポンと叩いた瞬間―
ドサッ。
―あ、倒れた。
「えぇぇぇぇいっ!?」
彼女の突然の卒倒に、光大はその場で慌てふためく。
―まったく、今日は女運の悪い一日だ。
しかし、これはまだまだ序の口。
この『ありえない出会い』が、光大のこれからを大きく揺るがすことになる。
《ヘリテイジ・セイヴァ―ズ―未来から来た先導者―(後半)につづく》
作品名:ヘリテイジ・セイヴァーズ-未来から来た先導者-(前半) 作家名:永山あゆむ