俺とみこの日常 8話
準備もすべて終えて、登校中。
今日は珍しく、みこ、優美ちゃんと一緒に登校。
…とはいっても、ちょっと先の交差点までの300m位だが。
「んっ」
いきなり、何かを払う感じに『んっ』と言った優美ちゃん。
それが気になった俺は、
「どうしたの?優美ちゃん」
と、聞いてみる。
すると、
「…なんか、幻聴が…」
と返ってきた。
…まさか。
「そーくん、どいて」
「のわっ!?」
俺を押しのけて、みこが聞く。
「ねえ、それっていつから?」
優美ちゃんは、えーとね。と前置きした後、
「昨日、みこちゃんの部屋に侵入したあたりから」
それを聞いて、やっぱり、と呟く。
俺も、みこも、だ。
俺たちはその”幻聴”の正体を知っている。
『読心術』
みこが”なぜか”使える、不思議な能力だ。
「え?何が”やっぱり”?」
二人ともいうもんだから気になったのだろう。優美ちゃんが聞いてくる。
だが、少し前、そのことでみこが家出した事件があった。
優美ちゃんも少しは関係している。
そのこともある、俺の口から言う事は出来ない。
「?そんな事言ったか?」
「言いましたよ!二人して”やっぱり”って!」
「言ってないよ?」
みこもどうやら言いたくないらしい。
「あれ?じゃそれも幻聴…?」
「かもね」
「でもおかしいんですよ」
「ん?何が?」
「だって、さっきのはそーくんさんそっくりの声とみこちゃんそっくりの声が聞こえてきたんです。それまではずっと、みこちゃんそっくりの声だけだったのに…」
ん?という事は…みこの分しか読めてない?
試してみっか。
みこが優美ちゃんの事大好きってさ。
「おかしいと思いません?」
…聞こえてないらしいな。
「今まではどんな内容の”幻聴”が聞こえてきたの?」
「ちょ、駄目っ!!」
みこが優美ちゃんの口を手でふさごうとする…も、かわされてしまった。
「えっと、『そーくん、帰ったら覚えてろよ』とか」
ブルッ
「『でも、優美ちゃんいるから、加減しないと』とか」
……みこ、読心術の事、すっかり忘れてたんだな。
「あとですね、『そーくんを振り』…モゴモゴ」
みこが顔を真っ赤にさせて、優美ちゃんの口を塞いでいた。
「そーくん、今の、聞いた…?」
正直言って、あの状況じゃ聞かないでいる方が難しい。
…この空間から逃げ出したい。
「…き、」
「き?」
もう駄目だ。そう思った時。
20m先に誰か、学生がいる事に気がついた。
…あれは、健太!!
やった、助かるぞ!!
「みこ、スマン、ちょっと行ってくる!」
そう言ってダッシュで逃げる俺。
みこは追いかけてくる事はしなかった。
作品名:俺とみこの日常 8話 作家名:ざぶ