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ナマステ!~インド放浪記

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それが、今日になってまだ出来てないって言うんですよ。」

(そういえば、僕の作業服もまだ出来ていなかったなぁ。)

まぁ、何があっても不思議じゃないのがここインドですから、良しとしましょう。
ましてや、つんつるてんの「おてもやん」とはいえ、お客さんの会社の作業服な
のですから。バスローブとは訳が違います。

「そういやお前、サラダ、食わなかっただろうな? それと水も。」
ゴリさんの問いかけに、あいまいな笑みを浮かべるだけの私。

「あーあ、これで午後、お前は使いもんにならんなぁ。」とゴリさん。
「やっちゃいましたねぇ。」とベンガルさん。
「???」の私。

ちょっと気まずい雰囲気をどうしたら良い物かと考えあぐねていたその時、
「ナマステ〜」と言いながら、運転手のハマちゃんがやって来ました。

(ハマちゃん、グッドタイミング!!)

「まぁ、とりあえず、行きましょう。稀に大丈夫な人もいますから。」
ベンガルさんに促されて、私たち一行は、ハマちゃんのおんぼろマイカーへと向
かったのでした。車に乗り込む前に、例の「お清めの儀式」がゴリ司教の元で取
り行われました。

(朝から大変だね、ゴリさん。)

さぁ、車にのってGoです!
通りに出ると、すごい混雑です。リヤカーみたいなのが付いた自転車やら、三輪
バギーにダンボールの屋根を付けたような車がまるでゴキブリのようにうろちょ
ろしています。みな、立派な「タクシー」なのだそうです。

「ブッブー」(おれが通るからお前はよけろ。)
クラクションで会話をしながら、ハマちゃんは起用にその間を縫って走ります。
絶対に私には運転できません。いや、私以外の誰でも無理でしょう。インド人以
外は。

この町に唯一ある信号機のある交差点に差し掛かりました。右に曲がりたいので
すが、ゴキブリどもがビュンビュン来てなかなか曲がれそうにありません。左側
には、大きな川が流れています。なんという川か忘れましたが、ここでは毎朝夕、
沐浴が行われ、飲み水、洗濯、炊事、さらには火葬した骨を流すのに使われる聖
なる川なのだそうです。昔は、火葬せずにそのまま遺体を川に流したので、流れ
る遺体のそばで沐浴したり、炊事したりしたそうですが、今は火葬にするので大
丈夫だとか・・・・なにが大丈夫なのか?

河岸で、数人の老婆が、ぺったんぺったんと布切れを石に叩き付けています。い
つかテレビで見た、洗濯の風景です。「昔の日本もこんなだったんだろうなぁ。」
と思いながらその風景を珍しく見ていました。ふと、一人の老婆が石に叩き付け
ている布切れを見ると、どうも何処かで見た気がします。

「あー!」
よく見るとそれは、私の作業服ではありませんか!!

「あー! 僕の作業服がぁーー!」と叫んだ方向を見たベンガルさんが、私よりも
大きな声で叫びました。

「あー! 僕のスーツがぁーー!」

(えーー?)

私の作業服を叩き付けているおばあさんの隣りで、仲良くぺったんぺったんとや
っているおばあさんの持つその布切れは・・・・ベンガルさんの一張羅だったの
です。

「はははは、こりゃ傑作だ!」
ゴリさんだけが笑っていました。

上機嫌なゴリさんと、テンション下がりまくりのベンガルさんと私を乗せた、お
んぼろ車は着実に客先へと向かって走り出しました。夕方、ホテルに帰って、出
来上がったベンガルさんのスーツは、肩パットが縫い目に固まり、009の制服
のような状態になっていました。とりあえず、「おてもやん」から「009」へ
と昇格を果たしたのでした。