小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ナマステ!~インド放浪記

INDEX|24ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

今回の滞在は「NatraJ Hotel」、この町で唯一のホテルです。私が行った時は、
もう一つホテルを建設中でした。現在は数件のホテルが立ち並んでいるそうです
が、当時はこの一軒の独占状態となっていました。

このホテルの部屋、広さは20畳ほどもあり、王様が使う様なレースのカーテン
付きのダブルベッドとダイニングテーブルが付いています。びっくりしたのは、
部屋の壁、床、全て総タイル張りなのです。まるで、お風呂の中で生活している
様です。外が暑いので、ひんやりして良いのですが、テレビの音声、自分の声に
エコーが掛かります。思わず、「ババンババンバンバン♪ あ〜びばのんのん♪」
と歌ってしまいました。

お風呂は付いてなく、シャワーのみでした。備え付けのバスタオルは黒くくすん
でいて、まるで大きな古雑巾の様です。これには訳がありまして、インドのシャ
ンプーには染め粉が入っているのです。黒髪が美男美女の象徴とされ、そのため
にホテルに備え付けのシャンプーですら、黒い染め粉が入っています。髪を洗う
と、真っ黒な泡と真っ黒な水が流れます。肌も黒くなっている様な気がしますが、
もともと肌の黒いインドの人はさして気にならないのでしょう。

部屋にはエアコンが装備されていますが、このエアコンが曲者です。「ブルンブ
ルン」とエンジンの様な音をたてて動く割にはあまり涼しくなりません。しかし、
止めるとサウナ状態になるので、仕方なく付けるのですが、うるさくて寝られた
ものではありませんでした。なので、毎日ベンガルさん、ゴリさんとお酒を飲ん
で、テケテケになってから眠っていたのです。

最初に部屋に入り、トイレに入った時、トイレットペーパーが無いことに気づき、
廊下を歩いていたメイドさんに10ルピーを渡して、トイレットペーパーを頼ん
だら、数分後、10ロールくらいのトイレットペーパーを抱えたメイドさんが、
顔中に満面の笑みを湛えながらやって来ました。
(そんなにいらないのに・・・・チップ、やりすぎたかな?)

とにかく、プライベートなんてあったもんじゃなく、ひっきりなしに人が来ては、
掃除したり、ベッドをなおしたり、這い回る虫を退治したり、世話を妬きます。
ありがたいのですが、シャワーを浴びて、スッポンポンで涼んでいた時に、いき
なりメイドのおばあさんに入ってこられた時には、さすがにびっくりしました。
鍵をかけていても、マスターキーであけて、勝手に入ってきちゃいます。「なに
か問題でも?」というような顔をして。あとで分かったのですが、「Please don't
disterb」の札をかけておけば大丈夫だったのです。
今では、当たり前のことかもしれませんが、当時の私はそんな事すら知らなかっ
たのです。今思えば、本当に若葉マークだったのです。

インドのテレビ番組は他の国と全く違い、とても特徴がありました。(今はどう
か分かりません。)その当時、インド映画「踊るマハラジャ」というのが、日本
でも流行っていました。この映画はコメディの要素にミュージカルの要素を加え
た斬新なものであったと記憶しています。それと似たような番組がどのチャンネ
ルでもやっているのです。とにかく、どの番組も歌って踊っているのです。もち
ろん言葉は分かりませんが、ドラマをやっていても、いきなり何の脈絡もなく踊
り始め、だんだんと踊り手の数が増えて行き、最後は、数十人の集団で同じステ
ップ踏み、踊ります。ダンスの切れはすばらしく、男優も女優も美しい人たちば
かりだったので、内容の分からない私ですら、しばし見入ってしまいました。

宗教柄、エッチな番組は皆無です。キスシーンもNG。男女が見つめあい、良い雰
囲気になると、音楽が始まり、二人が歌いだし、一人二人と人が増えて行き、最
後は集団で踊る。これが、定番でした。こういう番組を総タイル張りでエコーの
聴いた部屋で見ると、超サラウンド音響となり、自然と私の体も動きだしてしま
うのでした。日ごろの運動不足もあり、パンツ一丁でテレビ画面を見ながら見よ
う見真似で踊り狂う姿を何人のメイドさんに見られたことでしょうか。

さあ、朝です。
今日は会議です。頑張らねば! その為に呼ばれたのですから。昨日、しこたま飲
んで「ベンガル虎」に変身したベンガルさんも、今日はもう「おてもやん」に戻
っていることでしょう。「ブシュブシュ」と音を立てながら蛇口から出る、泥水
のような水道水で歯を磨きます。水を飲まなければ大丈夫。
最後のうがいはミネラルウォーターを使います。

さあ、出発。おっと、その前に腹ごしらえ。フロントに電話をして、モーニング
のルームサービスを頼みます。朝食を部屋で食べても35ルピー(約90円)な
ので安いものです。部屋に付いている、ダイニングテーブルに、トースト、オム
レツ、サラダ、コンソメスープが並びます。昼食、晩飯はカレーしかありません
が、朝食だけは、カレー風味以外のものを食べることが出来ます。給仕のおじさ
んが、腕にナプキンをかけて、食事の間じゅうじーっとこちらを覗いています。
そして、コーヒーがなくなると、ささーっとやってきて、カップにコーヒーを入
れてくれます。とってもありがたいのですが、とってもうざいです。
でも数日で慣れました。

ゴリさんが、「生野菜だけは絶対食べるな。ここの生野菜は人糞で育てている。
腹に虫がたかるぞ。覚えとけ」と言っていたのを思い出しましたが、このサラダ
が見るからにおいしそうなのです。気にせず、ぱくぱく食べてしまいました。そ
のおいしかった事! 野菜一つ一つに濃厚な野菜本来の味があります。たまねぎな
どは、日本では水っぽくなってしまいましたが、小さい時に食べた甘くてほろ苦
い本当に懐かしい味がしました。

もう一つ、ゴリさんに注意されたのが、「水」です。水そのものというよりは、
「氷」に問題があるのです。給仕される水はミネラルウォーターなのですが、氷
まではミネラルウォーターで作りません。したがって、これを飲むとお腹を壊す
のだとか。でも、そんなことはすっかり忘れてしまった私は気にせず、がぶがぶ
飲んでしまいました。おいしかったぁ。お腹いっぱいです。給仕のおじさんにチ
ップを渡し、後片付けを任せて、戦闘服「スーツ」に身を包んだ私は打ち合わせ
用の資料を抱えてフロントへと向かいました。

そこには、ソファーにどっかりと座って煙草を燻らせるゴリさんがNewyorkTimes
を読んでいました。

「おはようございます。」と私。

私の顔を見るなり、「おう、おはよう。 どうだ、かっこ良かろう。」とゴリさん。
読めない英字新聞の写真だけを眺めながらご満悦のご様子。しかし、ポーズだけ
は決まっていました。

「あれ、ベンガルさんは?」

「まだ、来ていない。 昨日、相当行っちゃってたからなぁ。」

そんな事を話しているうちに、ベンガルさんが階段から降りてきました。その姿
は昨日の「おてもやん」のまま。「いやぁ、すいません。昨日、間に合うってい
うもんだから、一張羅のスーツをクリーニングサービスに出しちゃったんですが、