ナマステ!~インド放浪記
なりました。
お皿に乗せられたのは、そのおばあさんが朝作ってきた手作りのお菓子で、稗と
か粟の穀物を蜂蜜で絡めて丸めた”犬のフン”の様ないでたちをしておりました。
それをさっきまで手づかみでお弁当を食した手で、お配りになったのです。
「ナマステー」といったものの、それを食べるのに躊躇していると、隣のベンガ
ルさんは、それをポイっと口に入れ、おいしそうにクチャクチャと召し上がって
おりました。・・・・つわものです。
・・・ええーい、ままよ!
私もそれを口に放り込み、クチャクチャ・・・とても甘いけど、チャイと一緒に
食せば、それはとてもおいしい食べ物でした。ゴリさんが、お得意の「おしりな
っぷ」を取り出し、それで手を拭いて、そっとそのお菓子の載ったお皿にその紙
で蓋をして食した振りをしていたのを私は見逃しませんでした。
今までの仕返しとばかり、
「ゴリさん、食べないんですか? せっかく頂いたのに、悪いですよ。」
と言ってやりました。
すると、あろうことか、ゴリさんは、
「お前、食い足り無さそうだな、俺は腹が一杯だからやるよ。」
と私の空になったお皿と自分の「おしりなっぷ」で蓋を閉めた皿を目にも止まら
ぬ早業でさっと取替えたのです。そして、「おっと失礼!」そう言って、蓋をし
ていた「おしりなっぷ」を取り去りました。
結果、私のお皿の上にだけ、あの”犬のフン”が鎮座しているという状況になり
ました。さらに、ゴリさんは、老夫婦の肩を叩き、空になった自分のお皿を指差
しながら、もう1方の手で親指を立て、「Good!」といいました。
老夫婦は満足そうにうなずきながら、空になったお皿に目を移し、1つだけ残っ
ている私の皿を見るや、怪訝そうな悲しそうなかおで、私を見つめました。
私は急いでそれを口に放り込み、クチャクチャ・・・そして親指を立て、ニッコ
リ。「Verry Good!」
(こ、こいつ、いつか殺す!)
こころの中でそう思いながら、空になったチャイの器を恨めしそうに見つめ、い
つまでも口に残る甘ーい”犬のフン”をクチャクチャとやっておりました。
若輩者の私が、百戦錬磨のゴリさんにかなうはずもありません。仕返ししようと
した私がバカでした。
車窓の景色はどんどんと町並みをはずれ、あたり一面、緑色の世界となり、ぽつ
んぽつんと小さなわらぶき屋根が見えるどこか懐かしい風景へと移り変わって行
きました。もうすぐ、目的地ジャムシェドプルに到着です。これからどんな冒険
が待ち受けているのでしょうか。
作品名:ナマステ!~インド放浪記 作家名:ohmysky