「ぶどう園のある街」 第五話
「ただいま!遅くなってゴメンね。お父さん変わるから、お風呂に入って」
「美也子か、いいんだよ。疲れているんだろう?先に入りなさい」
「明日は休みだからいいの。お父さん今日は休んで」
「そうかい、じゃあそうさせてもらうよ」
「うん、明日は久しぶりにどこかに出かけましょうか?」
「いいなあ・・・母さんとどこにするか話しておいてくれよ」
「そうする」
母は、海が見たいといった。明日は半島の先までドライブしようと美也子は決めた。
そして夏には人気のある海水浴場に出来ていた温泉に入ろうと計画をした。自分もであるが母達も何年も温泉には入っていなかっただろうからこの寒い時期に少しでも身体が温まれたら、幸せに感じてもらえるのではないかと思い付いた。
風呂から出てきた父親にそう話して賛成してもらえた。母も自分が温泉に入れるだろうか不安に感じていたが車椅子と自分が抱きかかえて入浴すれば、何とかできると返事して承知してもらった。美也子はどうしてもそうしたかった。母親にゆっくりと温泉に浸かって欲しかったし、今の母の状態なら手助けをすれば歩ける状態だったから可能だと信じられたからでもあった。
作品名:「ぶどう園のある街」 第五話 作家名:てっしゅう