「仮面の町」 第六話
「違うよ。真実が知りたいって行動しているだけよ。あなただって私の言うことおかしいとは思わないでしょう?」
「そうだけど・・・そこまでする意味が解らない」
「警察がそういう態度じゃ困るね、違う?」
「天木さんが自分の身内でもない他人のことで一生懸命になっている事が理解出来ないって思うだけ」
「正義のためよ」
「正義?」
「あなたたちの職場ではもう失ってしまったことなんだよね?そしてこの町全体にそういうムードが漂っている。それが嫌なの。天木さんと出会って彼の強い正義感に惚れたの。この町の若者にない新しいエネルギーを感じたの。陽子だって久能家の言いなりに動かされているこの町がいいとは思ってないでしょう?」
「久能家?ひょっとして事故の加害者は・・・久能不動産の・・・」
「その疑いがあるの。肇と運転手のね」
「そんな・・・」
陽子はそう言うとしばらく黙ってしまった。
父親から久能肇のことは天子のように聞かされていたから、そんな事が世間に知れたら大変なことになると容易に想像できたからだ。
作品名:「仮面の町」 第六話 作家名:てっしゅう