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伊野はや子
伊野はや子
novelistID. 35938
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詩集:月を見上げる

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月を見上げる


月を見上げる
都会の片隅で
蛍光灯に煽られながら
流れゆく雲に隠されながら
光る星々とともに輝きながら
じっと夜空に浮かぶ月を見上げる

人気のない町中で
ポケットに両手をいれ
白い息を吐き
些細な不安を忘れるために
新たな決意を生み出すために
頼りなくも確かな光を放つ月を見上げる

心に余裕のある人が月を見上げるのだ
悲しみに涙を流していたって
怒りに身を震わせていたって
月を見上げるだけで
目は地面から離れ
脳はそれまで渦巻いていた思考を止め
心はいっときの休息を得る

さらに余裕のある人は
星の数をかぞえ
線と線でつなぎ
新たな星座を創造する

月を見上げる
ただそれだけのこと

作品名:詩集:月を見上げる 作家名:伊野はや子